次は動物試験の話です。今までに作られた遺伝子組み換え農作物については、動物試験がされていません。なぜなら、動物試験をしなくてはいけない問題がなかったからです。また、食品について動物試験をすることはむずかしいのです。
どのようにむずかしいのですか?
ここでは実際に動物試験をしたと言っているイギリス人の話を例に説明しましょう。この研究は、毒性があることが知られているたんぱく質のレクチンをジャガイモに導入して、実験動物のラットに食べさせたものです。その結果、遺伝子組み換えをしたジャガイモを食べさせたラットに異常が起こったというのです。この研究は、新聞などで話題になりました。でも、この研究をした研究者のいた研究所のほかの人たちは、この研究を正しい方法で行われたかに疑問をもっています。それに、英国王立協会という、イギリスの科学者の集まりが調べたところ、「科学的に正しいとは言えない」と結論が出たのです。
でも、異常が起こったのは事実ではないのですか?
異常が起こったことは事実かもしれません。でも、その異常が「遺伝子組み換え」が原因だったかはわかりません。人間の食品を動物試験する場合には、化学物質の場合と大きく違っている点があります。たとえば殺虫剤などや食品添加物などの研究には動物試験はとても役に立ちますが、人間の食品を動物に食べさせたときには、場合によっては違う結果が出てきてしまうのです。なぜなら、食品はたったいくつかの物質でできているわけではなく、いろいろな成分がたくさん含まれていますし、含まれる量もひとつひとつの食品によって微妙に違ってきます。
どういうことですか?
たとえば、日当たりの良いA地方の畑から取れたトマトと、日当たりの悪いB地方の畑で取れたトマトでは、栄養や味が違ってくることはわかるでしょう。このように、同じトマトを試験しても、あるトマトに関して動物に何らかの作用が見られることがあります。そして、日当たりの悪い畑から取れたトマトで悪い影響が出たからといって、日当たりの悪さがその原因だったとはいえません。なぜなら、日当たり以外の条件、たとえばB地方でできたことが原因かもしれないからです。同様なことは大豆に関しても見られます。したがって、実験は注意深く設計しなければりません。たとえば、B地方の日当たりの良い畑のトマトも試験しなくては本当の原因はわからないのです。
そうか、今、出回っている遺伝子組み換え農作物は、たとえば食品組成の分析やアレルギー源性などの分析で安全を十分に確保する情報を得ることができるということなのですね。動物試験は本当に要らないのですね。
いいえ、動物試験をすべての食品について必ずしなさいというのはおかしいということです。これから、いろいろな遺伝子組み換え農作物ができてきたら、動物試験が必要なものができることはあると思います。そのときには、動物試験をしなくてはいけませんね。