「種の壁」を越えて遺伝子を取り込むのは危ないとか言う人がいますけれども、もう一度、遺伝子とは何かを思い出してみてください。遺伝子は、私たち生物が共通に持っていて、私たちの性質を決めているものですでしたね。遺伝子を作っているDNAは、それがほうれん草由来のものであれ、豚肉由来のものであれ、どれも同じ4種類のヌクレオチドと呼ばれる成分からできているのです。
そうです。覚えていますよ。遺伝子組み換えによって入れられた遺伝子も、元からある遺伝子も、DNAを作るヌクレオチドとしては同じ4種類からできているのですよね。
そうです。たとえば魚とウサギから同じたんぱく質の情報を持っている遺伝子を取り出してくると、あたりまえですけれど、遺伝子の耳が大きかったり、生臭かったりしないし、区別がつかないのです。人間が行っている遺伝子組み換え技術では、ある生物の持っているすべての遺伝子を違う生物に入れるわけではありません。ウサギの持っている遺伝子すべてを魚に入れれば問題があるでしょうが、遺伝子ひとつを取ってきた場合には、その遺伝子がどの生物のものだったのかは問題ではありません。それより、その遺伝子がどのような働きをする遺伝子なのかが重要なのです。

そうか。ひとつひとつの遺伝子を取り出してくると、もとの生物が何だったのかで問題になることはないんですね。もうひとつ、質問したいのですが、人間が合成した遺伝子を入れることもできるとききましたが、本当なのですか?
本当です。ただし、まだ人間が自分の好きなように遺伝子を創り出したりすることはできません。この場合の「合成」とは、すでに生物が持っている遺伝子のDNAの持っているヌクレオチドの並び方を解析して、そのデータをもとに試験管内で組み立てるという作業を指しています。上の絵の中のA酵素遺伝子DNAを試験管内で作ったと考えてください。この場合も、魚のものでも、ウサギのものでも、人間が合成したものでも、DNAとしては区別がつきません。
確かにそのとおりですね。でも、人間がDNAを作ったり、それを組み換えたりできるようになったのは最近のことですよね。理屈ではわかっても、もう少し慎重に進めたほうがいいような気がしますが…。急に遺伝子組み換え食品が出回り始めたような気がします。
そうですか。実はもう1970年代に生まれた技術なのですよ。それでは、この技術の歴史について次にお話しましょう。