クローン技術ってなんですか?

クローン技術は、遺伝子組換えとは異なる技術ですが、同じバイオテクノロジーの革新的な技術として紹介しておいた方がいいと思います。一般にクローン技術と呼ばれる技術には二種類あります。一つは体細胞クローン技術と呼ばれるもので、もう一つは受精卵クローン技術と呼ばれるものです。

まず、体細胞クローン技術の話をしましょう。羊のドリーの話を知っていますか?ドリーは母羊です。イギリスの研究者がドリーから子供を作るための細胞ではなくふつうの細胞を取り出して、その中の遺伝子(DNA)をもとに自分と全く同じ性質を持った子供を作り出しました。この成功まで、ふつうの細胞の遺伝子を使って子孫を作ることはできないと考えられていたのです。なぜなら、ふつうの細胞は寿命を持っていて、そこから取り出したDNAは、もうすでに子供を作る能力を失ってしまっているからです。

これで、いわゆるクローン(全く遺伝的に同じ性質の生物を世の中に送りだすことができる)が可能になったのです。これは、科学的にはすばらしいことですが、倫理的には深い問題をはらんでいます。もし、この技術が人間に用いられたとしたら、想像するだけで恐ろしいことが起こることがわかるでしょう。そこまで深く考えなくても、ヒトラーの細胞からもう一度ヒトラーを蘇らせるとか、自分と同じ人間が血液検査で取られた血液からもう一人の自分が作られるなんて、耐えられないですよね。

ともかく、このような技術を体細胞クローン技術と言います。

もう一つの卵細胞クローン技術ですが、こちらは卵が受精した後、本当の初期の段階で(卵が3回か4回分裂して増えた段階で)その中にあるDNAを取り出して、別に用意しておいたDNAを除いた卵のバッグに入れる技術です。これは、自然に三つ子や四つ子、六つ子ができるのと似た過程を人工的に行うようなものです。この卵細胞クローンの技術を使うと、一卵性双生児ならぬ、一卵性16生児が生まれます。この技術を使えば、たとえば良質の家畜を一度に安定して生産することができ、ひいてはおいしい肉を手軽に食べることができるようになるのです。

これが、卵細胞クローン技術です。これは、同じ「クローン」と呼ばれるのでまぎらわしいですが、卵細胞クローン技術は科学的には体細胞クローンとは技術レベル的にも、倫理的にも全く違うものです。

ちなみに、「クローン」という言葉から、自分と同じものがうじゃうじゃできたりする体細胞クローンの印象しか思い浮かばない人もいるかもしれませんが、実はドリーで成功した動物の体細胞クローンはクローン技術のうちの非常に特殊なものなのです。たとえば植物では、もっとずっと身近にクローン技術が用いられています。挿し木や挿し葉で植物を増やすこともクローニング、すなわちクローン技術のひとつです。ここに、表にまとめておきましょう。

 

 

使う細胞

できる子供と母親の遺伝的関係

できる子供どうしの遺伝的関係

体細胞クローン技術

ふつうの細胞(体細胞)

全く同じ

全く同じ

卵細胞クローン技術

子孫を作るための細胞(生殖細胞)

半分は違う(半分は受精に使った父親から)

全く同じ

挿し木(植物のクローン技術)

ふつうの細胞(木の幹)

全く同じ

全く同じ

さて、1999年の4月に、クローン牛の肉が食卓にのぼっていることが報道されました。そして、このような肉を消費者にそうだと知らせずに食べさせるのはとんでもないことだという意見がでてきたのです。この場合のクローン牛とは受精卵クローンです。このような議論は、卵細胞クローン技術を用いて家畜の改良、たとえば、最高級の和牛の霜降りをたくさん作る遺伝的な性質を持っている肉牛を作る研究をしている研究者にとって、まさに晴天のへきれき、予想だにしなかったことでしょう。何しろ、良質の肉を安価に消費者に提供するのですから、感謝こそされても反感を買うなどということは、考えてもみなかったでしょうから。

クローン牛反対の意見を述べている人たちは、良質の和牛は、最高の肉質を持った雄牛から取り出して凍結しておいた精液を使って生まれていることをなぜ問題にしないのでしょう。

そして、挿し木で増やした木になったりんごは食べないのでしょうか?

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