イギリスでは遺伝子組換えは嫌われているのですか?
一言で言えば、嫌われています。かなり前になりますが(1999年5月30日)、ある新聞に掲載された次のようなコラムを読んでいただければわかると思います。
『遺伝子組換え(GM)食品を排除しようという英国社会の動きが急だ。きっかけはアーバド・バズタイという老教授の発言である。昨年八月、GMジャガイモをネズミに食べさせたら免疫機能などが低下した、との研究結果をもとに「GM食品は本当に安全なのか」と(科学の分野の手段ではなく:筆者補)テレビで発言したのだ。番組の二日後に所属研究所の所長が「不完全な実験で、社会を混乱させた」と非難し、教授は停職に追い込まれる。
企業と政府による安全キャンペーンに対し、消費者団体が反対活動を再燃させ、野党の保守党とマスコミが動いた。大きな政治問題となり、政府は今年三月、市販の食品はもちろん、飲食店や惣菜店にも、GM食品を含んでいるかどうかの表示を義務付ける規則を定めた。半年後に実施される。消費者の動きはもっと早かった。ある大手スーパーが昨年、「GM食品は扱わない」と宣言すると、その店の売り上げが急増した。他のスーパーが次々と後を追っている。狂牛病の経験などから、人々は食品の安全性にとても敏感になっているようだ。…』
初めに出てきているバズダイという人の発言は、1999年に起こった所沢のダイオキシン汚染の報道を思い起こさせます。某テレビ局が、化学分析データを(もし仮に意図的に曲解したものではないにしても)よく理解しないままに、ニュース番組の中で報道し、それが事実と異なっていたために謝罪騒ぎになったものです。このテレビ局が科学者だったら、やはり追放でしょうか?
科学者にしろ、マスコミにしろ、その発言は社会に大きな影響を及ぼすことがあります。その場の注目を集めることは可能でも、無責任な発言はいずれは責任を取らなければならないものですし、信頼性を下げてしまいます。
狂牛病のことに、後半で触れていますが、イギリスでの食品の安全性を語るときには、この問題は常に念頭に置いておかなくてはなりません。イギリスは狂牛病の発生の中心地ですが、この問題に対する政府の対応が、後手後手に回ってしまったのです。この件は、日本での薬害エイズの事件に似ているところがあります。そして、イギリス政府はイギリスの人たちの信頼感を失ってしまいました。また、イギリスのスーパーがそれを利用して、自分の店の売り上げを上げようとするのは商売に携わる者として当然の動きです。野党やマスコミが、自分たちが消費者のことを「心から思っている」と売り込むのも、票や視聴率に結びつくのなら当たり前のことでしょう。
ある意味では、おかげで高い食品を買わされたり、無用な心配をさせられるなど、消費者は踊らされているだけかもしれません。日本では、私たち消費者が損をしないように、正しい判断に基づく、商売主義を排した消費者運動を繰り広げていきたいものです。