石油たんぱくという言葉を聞いたことがありますが何ですか?
これは微生物そのものを食べる利用法でした。実は微生物の仲間のキノコを、私たちはすでに良質のたんぱく質源として広く利用しています。さらにキノコの仲間でもあり、パンやお酒を作る酵母の一種をたんぱく質源として利用することも考えられました。世界の人口がこのまま増えつづけると人間が食べるにくや魚が不足すると考えられます。そこで日本をはじめ世界各国では1950年代から、ほかのたんぱく質源を探す研究が始められたのです。その一つが、酵母のたんぱく質源としての利用の研究でした。このたんぱく質源としての酵母を英語ではsingle cell protein(単細胞たんぱく質)と呼んでいます。単細胞生物である酵母のたんぱく質と言う意味です。しかし日本では石油を酵母の栄養源として用いたことから「石油たんぱく質」と呼びました。1950年代は、現在とちがって石油がいつまでもふんだんにあると考えられていたので、酵母を生育させるために石油を使うことが考えられたのです。石油たんぱく質の製造法は技術的に確立されましたが、その後の商品化や安全性の確認をする前に「石油を食べさせられる」といった間違った考え方が消費者のあいだに広がってしまいました。そして、社会的に受け入れられることなく、石油ショックが起こりました。また、石油が限られた資源であることも分かり、石油たんぱく質は開発が中止されたのです。それでは石油たんぱく質は安全なのでしょうか。石油たんぱく質を作る酵母は石油をほぼ完全に分解してしまいます。また、たんぱく質ができた後、きれいに洗うので、石油の成分は完全に取り除かれます。また、納豆を食べても人間が納豆臭くならないのと同様に、石油にはやした酵母は、石油のにおいは全くしません。今では、酵母などの微生物をたんぱく質源とする研究や開発は東ヨーロッパなど一部の地域を除いてされていませんが、将来食料不足になったら、必要になるかも知れません。でも、そのときには、化学調味料の原料でもある糖蜜のような、石油以外のものを原料として用いることになるでしょう。

酵母のたんぱく質としての利用以外にも、これからも増え続ける人口をまかなって、世界から飢えをなくすために、新しい食料生産の方法が開発されています。荒れた土地でも育てることのできる穀物や、収量の高い穀物などをつくり出す技術である遺伝子組み替えを用いた食品についても、石油たんぱく質のときに起こった、片寄った意見に基づく誤解をせずに、正しく科学的な見地に立った理解を進めていきたいですね。
