私は将来細菌学者になることを夢見ています。細菌学の実験研究においてもっとも注意しなければならない点とはなんでしょうか。また、研究方法はどのようなものが主体となっているでしょうか。(電子)顕微鏡をのぞくのが主な方法でしょうか。また未来はどのような方法が主となると思われますか。たとえば、将来DNAの分析が進み人間が細菌を完全に理解できるようになって細菌学と言う学問がなくなる(必要なくなる)ようなことがあると思われますか。

実験では、常に安全を心がけることです。これは、自分に対して、周囲の人たちに対して、そして周囲の環境に対してです。これは、基本ですね。あとは、注意深く観察すること、実験結果に対して自信を持つことでしょうか。最後に、実際の研究の現場では、それまでの常識を疑うことです。教科書の記述と違う結果が出たら、注意深く検討して、さらに検証を深めていく、というかたちで研究をするというふうになります(これは、大学を卒業するころから気にかければいいことですが)。

微生物学の研究方法ですが、今はとても細分化されています。電子顕微鏡を覗く研究もあるし、顕微鏡などほとんど見ないでDNAを取り出して遺伝子を解析する研究もあるし、本当にいろいろです。将来についても、何が主流になるとかではなく、より研究の方法が多様化すると思います。逆に、いろいろな微生物学の手法を学んで、自分のオリジナリティにあふれる研究を進められると思います。また、DNAの解析は細菌を理解するためにするものです。そういう意味では、DNAの分析は、顕微鏡で観察するというのと同じで、その上にある細菌学を研究するための基礎的な手法のひとつであるとも考えられると思います。

ここで「研究」についてちょっと話をしてみましょう。

研究とは、何かの疑問、問題、課題に対して答えを求める活動です。たとえば、新しく発見されたある微生物の性質を解明するという「問題」についていろいろな手法を用いて解析することが研究です。そのために用いる方法としては、顕微鏡を用いた、微生物の体の微細な構造の解析、生化学実験を通じた、微生物の代謝(食べ物や排泄物)の分析、あるいは、DNAやたんぱく質の構造の解析を通じた微生物の活動の指揮命令系統の解析などがあります。

これらのどの手法も大切な手法です。「木を見て森を見ず」ということわざがありますが、森の構成の観察に置き換えてみると分かりやすいかも知れません。顕微鏡での観察はその森に生えている木の種類や生え方の観察、生化学実験は、その森から発散する酸素や花粉の量の解析、DNAやたんぱく質の解析はその森を支える下草や微生物の活動の分析にあたるかもしれません。この森の真実の姿の研究とは、このような多面的な解析から得られた事実を論理的に組み合わせて、理解しやすい形にまとめることです。

それぞれの解析や分析をすることは、研究のための事実を得る活動で、非常に重要なステップですが、それ自体は研究と呼べるものではありません。あくまでも、それらの事実をまとめるのが研究なのです。ただ単に与えられたDNAを24時間解析しつづけることだけでは研究になりません。

ここで誤解の無いように、付け加えておきますが、DNAの分析方法の改良や、顕微鏡観察の手法の工夫などは、立派な研究です。なぜなら、改良や工夫の必要な問題に対しての答えを導く活動だからです。

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