人間の持っているような免疫は、どんな生物にもあるのですか?

免疫とは、ある生物が、自分と異なる生物から攻撃を受けたときに、自分を守るシステムであること、また免疫に関する本当の基本は免疫について本当に簡単に教えて下さいで紹介しました。

それでは、そのような免疫はどんな生物にもあるのでしょうか?たとえば、生物でも微生物は、人間のような免疫系を作り出す機能を持っていません。特に、微生物の中でも単細胞生物(ひとつの細胞からできている生物)では、免疫系を作り出す細胞を別に持てるはずがないから、人間のような免疫系は、当然、ありません。植物でも、複雑な構造を持つものでは、自分を外敵から守るシステムを持つようになります。たとえば、「蓼食う虫も好きずき」ということわざに出てくる蓼という植物は、このことわざどおり、昆虫の嫌う物質を作って、自分の体を食べられないようにしています。しかし、これも人間の持つ免疫系とは異なります。

動物ではどうでしょうか?100年ほど前に、メチニコフという人が、ヒトデの幼虫にバラのとげを刺して、その様子を観察しました。すると、ヒトデの幼虫の体の中にあった細胞が、とげの刺さった部分に集まり、バラのとげを取り囲んで細胞の中に包み込むように取り込んでしまったのです。これは、貪食(どんしょく)と呼ばれる反応で、動物で見られる自分を守るシステムの中で一番原始的な反応です。

人間と同じような免疫システムは、背骨を持っている動物(脊椎動物)に見られます。脊椎動物には、魚(背骨がありますよね)、鳥、は虫類や両生類、そして、人などのほ乳動物の仲間があります。この免疫システムは、無脊椎動物(ヒトデなどを含む、背骨を持たない下等生物)の持っている貪食細胞も持っていますが、さらに、もっとずっと複雑な免疫細胞や、これらの免疫細胞の生産する免疫分子を持っています。ちなみにこの免疫分子の中で、一番よくあるものは、抗体と呼ばれ、人間などでは、いわゆる伝染病から体を守る働きをしています。皆さんが予防接種をすると、体の中で作られるのがこの抗体です。予防接種では、たとえば結核菌の抜け殻などを体の中に注射します。すると、免疫系が結核菌と勘違いして、結核菌に対する抗体をつくります。抗体を一度作ると、免疫系はその情報をずっと覚えています。そして、本当に結核菌が体の中に入って来たときに、記憶に基づいて抗体を作って、結核菌をやっつけるのです。

抗体は、それぞれの敵や病原体のひとつひとつに対して違ったものが作られます。たとえば、結核菌に対抗する抗体は、百日ぜきやハシカには対抗しません。だから、ひとつひとつの病気に対して予防接種を別々にしなければならないのです。

なぜ、人間はこのような複雑な免疫系を持っているのでしょう?こう考えてみると分かりやすいかも知れません。ヒトデなどは比較的簡単な体の作りをしています。だから、敵が侵入してきたときに、身体中から細胞を集めて、貪食することによって防ごうとします。また、たとえば昆虫では、たとえばコマユバチは芋虫の体に卵を産みつけてその幼虫は芋虫を食べて育ちます。コマユバチの幼虫は芋虫の防御反応で殺されないのでしょうか?また、生殖のときにメスの体内に入った精子は攻撃されないのでしょうか?きっと、攻撃され、殺されるものもあると思います。しかし、それ以上に多くの卵や精子が体に入って来てしまうのでしょう。これが、貪食などの簡単な免疫反応の限界であるとも言えます。しかし、ヒトデや、芋虫のような単純な構造を持つ生物では、維持するのにエネルギーも遺伝情報もはるかに多く必要な、より複雑な免疫機能を持つより、多くの個体を持って生き残る方が、生きていくために無駄のない方法なのです。少し乱暴な計算をしてしまえば、(たとえば)複雑な免疫機構を世代を越えて維持するためにかかるエネルギーが10だとすると、新しい個体を作るためのエネルギーは簡単な構造のヒトデでは1ですむのです。

一方、人間は非常に複雑な体の作りをしています。バラのとげが刺さったからといって、いちいち身体中から貪食細胞を指先に集めていては、大変な時間とエネルギーが必要です。もし、どこにとげが刺さっても大丈夫なように貪食細胞を体のあらゆるところに維持するとしたら、それも大変なことです。貪食細胞を維持するためには、エネルギーという「食事」を与える必要があるのですから。これだけの大きな体を守るためには、大変多くの貪食細胞が必要です。

そこで、高等生物は、必要なときに免疫系のスイッチを入れて、無駄なく防御反応をしているのです。そうすれば、体全体に貪食細胞を飼っておく必要はありません。少し乱暴な計算をしてしまえば、(たとえば)人間のような複雑な構造をしている生物では、複雑な免疫機構を世代を越えて維持するためにかかるエネルギーが10だとすると、体全体に貪食細胞を飼っておくためには100、新しい個体を作るためのエネルギーは1000以上にもなってしまうのです。

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