どのような微生物が遺伝子工学や遺伝子組換えに利用されていますか?

遺伝子工学とは遺伝子をある生物から違う生物に移す技術ですので、遺伝子を与える微生物と、その遺伝子を運ぶ運び屋と、遺伝子を受け取って、自分の性質を変化させる微生物があります。

遺伝子を与える微生物は遺伝子供与体と呼ばれますが、いろいろな有用な性質を持った様々な微生物が使われています。その中には、空気中の窒素を取り入れて自分の体の成分として利用することのできる窒素固定菌があります。この窒素固定菌の中には、マメ科の植物の根に住みついて根粒を作る根粒菌もあります。窒素固定をする遺伝子を取り出して利用する試みも行われています。もし成功すれば、空気中の窒素を利用した微生物をマメ科以外の植物に利用させるようにできて、窒素源の少ない土地での農業生産を向上できるかもしれませんね。この遺伝子供与体には、動物や植物の遺伝子を用いることもできます。

遺伝子を運ぶのはベクターと呼ばれる運び屋DNAです。ベクターにはウィルスを使うこともありますが、微生物の場合には、プラスミドと呼ばれるDNAを用います。プラスミドは、微生物の染色体とは別に細胞の中に存在するDNA分子で、比較的小さい、輪ゴムのような環状のものが多いです。プラスミドの多くは、はっきりとした機能を持っていない(あるいは、私たちにはわからない働きをしているのかも)のですが、一部には抗生物質を分解してしまう抗生物質耐性たんぱく質の遺伝子を持っていたり、はっきりとした働きをする場合もあります。また、すべての微生物がプラスミドを持っている訳ではありませんし、ある微生物の持つプラスミドは、他の微生物に入れようとすると分解されてしまったり、うまく取り出せなかったりする場合もあります。遺伝子工学では、扱いやすいプラスミドを探し出し、それに都合の良い遺伝子を組み込んだりした後に利用しています。

遺伝子を受け取る微生物は、遺伝子受容体と呼ばれます。微生物の中で、受容体として頻繁に使われる種類は数種類に限られています。扱いやすさとともに、安全性が要求されるからです。その中でも、最も良く研究され、頻繁に用いられる微生物には大腸菌があります。大腸菌の中でも、受容体として用いられる大腸菌は、わざとひ弱な性質に変化させて、実験中に自然界の中に万が一洩れ出しても生き延びられないように、また、人間が利用する際にも不必要な時に繁殖しないようにしてあります。

また、パンや酒を作る酵母も受容体として利用される場合があります。酵母も長年人間に利用され、安全性も確認されているので、利用されているのですが、酵母の場合にはもうひとつ大きな理由があります。人間など、高等生物のたんぱく質には、糖質という糖類がつながって木の枝のようになった物質がたんぱく質本体の外側に生えているものがあります。この糖質がついていないと、インシュリンなどでは働きが弱かったりします。また、正常な働きをしないものや、分解されやすくなってしまうものがあります。このように重要な働きをする糖質を大腸菌などの細菌は作ることができませんが、細菌より少し高等な酵母は作ることができるのです。ですので、糖質が必要な場合には酵母を用いるのです。

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