人間に利用されている微生物にはどんなものがありますか?
古くから、人間はそれと気付かず、微生物の働きを利用してきました。たとえば食品では、発酵食品(酒・ビール・味噌・醤油)や食品や化学製品の成分(アルコール・有機酸・アミノ酸)の製造に用いられています。また、農業の分野でも、土壌の肥沃化・窒素固定(空気中にふんだんにある利用不可能な窒素を利用可能な硝酸にする)を盛んに行っています。

くり返しますが、人間は古くから「それとは気付かず」微生物の発酵能力を利用してきているのです。確実にわかっているところでは、紀元前3、000年、すなわち今から5、000年も前、メソポタミア地方に住んでいたバビロニア人がビールを作っていたことが知られています。また、旧約聖書の「創世期」の中にすでにワインに関する記述があります。決してこれらを作ったり書いたりした人達がなぜこのようなおいしい飲み物ができるのかに思いをはせなかった訳ではなかったでしょう。これらの飲み物は神の下さったものだったのでしょう。だから、その時代の人達が、実は酵母という目に見えない微生物が作っているのだと知ったらどんな顔をするでしょうか。さて、十四世期になって、人間はこのようにしてできた醸造酒を蒸留して、アルコール濃度を高めることも始めています。蒸留とは、いろいろな物質の空気のような気体になる温度の違いをもとに、各々の物質を分けていく方法です。たとえばワインを少しずつ熱していきます。すると、低い温度で気体になる(蒸発する)アルコールがワインから湯気のように出てきます。それを管に集めてその先を冷やすと、今度はアルコールが冷えて液体になります。アルコールが全部蒸発してから、さらに温度を上げていくと、水が蒸発して水蒸気(湯気)となり、それを管に集めると水が採れます。実際には水が蒸発するより低い温度でワインの味や香りの成分が各々が蒸発する温度で集めることができるので、それらのエキス分と呼ばれる成分を濃くすることができるのです。でき上がったものは、おいしいブランデー(葡萄から作る)やウィスキー(麦から作る)です。
さて、蒸留をするようになった人類も、まだ微生物の存在には気が付いていません。微生物の存在に気付いたのは十七世紀に入ってからですし、その時も、このような素晴しい働きをしているのがその「小動物」であるとはわかりませんでした。それがはっきりと認識されたのは十九世紀になってからのことです。