細胞が物質を取り込む方法にはどういう方法がありますか?

どんな物質でも、放っておくと周囲へ広がっていって最後には全体に同じ濃さで存在するようになります。たとえば赤いインクをコップの水の中にたらすと最初はたらしたところに赤いインクがありますが、だんだんと広がっていき、最後には全体が薄く赤くなります。また、満員電車に乗っていると、となりの人がおならをしました。あなたはその人から遠ざかろうとして車両の端へ端へと逃げていきます。おならをした人から遠ざかれば遠ざかるほど匂いは薄くなっていきます。このように、一番濃いところから遠ざかれば、濃度は薄くなります。これを濃度勾配といいます。しかし、やがてそこにもプーンと…。おならは濃度勾配を濃い方から薄い方へ広がっていきますので、結局は逃げる事はできない。これが、拡散と呼ばれる、物質の自然界での挙動です。

さて細胞はひとつの袋ですが、その中の生物体が必要としている物質を取り込み、また、不要になったものを吐き出しています。たとえば赤いインクやおならが必要でなかったら、細胞はそれが中に入らないように拒否します。このような袋(細胞の場合は細胞質膜と呼ばれる膜)で行われる細胞の中と外との間の物質のやり取りを物質輸送系といいます。その方法は大きく分けて二つあります。一つはこの自然の摂理の濃度勾配に従って輸送する「受動輸送(受け身の輸送)」、もう一つは自然の勾配に逆らって自ら汗をたらして輸送する「能動輸送(積極的な輸送)」です。そしてもうひとつ、細胞質膜自体が物質を直接取り込んだりする方法です。これはエンドサイトーシスと呼ばれます。

いろいろな物質の内で、酸素、二酸化炭素、水は、もっとも簡単でもっとも重要な物質ですが、細胞質膜を単純に濃い方から薄い方へと広がる拡散によって行き来します。ふつう、細胞は酸素を使って活動をして、その結果、二酸化炭素を作ります。したがって、細胞が活動すると細胞内の酸素が減って、二酸化炭素が増えます。そこで、使われて濃度の薄くなった分の酸素を取り入れて、作られて濃度の高くなった二酸化炭素が細胞の外に吐き出されます。

拡散の原理を使った輸送

膜の外には中よりたくさんのコロ君がいるので拡散の原理でコロ君は膜を通って細胞の中に入っていきます。
今、入っていってます。
これで、コロ君の「濃度」が釣り合いました。ヨシヨシ!

酸素など、細胞の周りにふんだんにあるものはいいのですが、細胞はいろいろな物質の中から自分の欲しいものだけを取り入れるため、またはあまり周囲にないけれど確実に欲しいものを取り入れるために輸送体(キャリア)たんぱく質を使います。たとえばエネルギーの元になるブドウ糖はブドウ糖を輸送するたんぱく質が輸送します。細胞の中でブドウ糖が使われるので、その濃度は細胞の中の方が薄くなり、濃度勾配にしたがった輸送、すなわち拡散によってすればいいのですが、ブドウ糖が周囲にたくさんあるときも、あまりないときも必要な量のブドウ糖が確保できて、また余計な量が入らないようにコントロールしているのでしょう。これらが受動輸送です。

輸送体(キャリア)を使った輸送

このコロ君たちが細胞の中に入るためには輸送体が必要です。
滑り台のように入っていきます。ウーン、気持ちいいぞ!シューーー…。
これでコロ君の濃度は釣り合いました。めでたしめでたし!

拡散や濃度勾配に逆らわない輸送は、自然の摂理に基づいている輸送でした。それでは、濃度勾配に逆らって物質を入れたいときにはどうするのでしょうか?自然の流れに逆らって物事を行うときには生物は必ずエネルギーを使います。それは、エネルギーを使う輸送、能動輸送です。一番良い例が神経細胞でのナトリウムとカリウムの輸送です。ふつう、神経細胞の中はカリウムイオンが濃く、外はナトリウムイオンが濃くなっています。神経が信号を伝達するときにはこの二つのイオンが細胞質膜を通過することによって伝えられます。このイオンの通過は中のカリウムイオンが外に、逆に外のナトリウムイオンが中に入るので、自然に起こりますが、信号を伝えた後、それぞれが元に戻らないと次の信号を伝えられません。これはちょうど、何枚ものドミノを並べて立てて、それを神経の信号が駆け抜けるように倒すドミノ崩しのようで、崩した後に、また全部のドミノを一枚一枚立て直さないと次のドミノ崩しができないのと同じです。休眠状態にある動物が使っているエネルギーの三分の一はこの神経のドミノの立て直しに使われているということです。休んでいるあいだも、私たちの体ではせっせと働いている細胞があるのです。

最後に細胞質膜自体が物質を取り込むエンドサイトーシスという働きがあります。また、同じようにして吐き出すエキソサイトーシスもあります。細胞自体が大きく窪んで他の細胞を取り入れるのは、白血球が異物を取り込むような場合があります。これは貪食と呼ばれます。また、外部にある物質が細胞質膜に取り込まれて細胞の中に運ばれるのは、インシュリンやコレステロールが動物細胞に取り込まれる際に見られます。

エンドサイト-シス

コロ君が膜の窪んだところから取り込まれていきます。ムニョムニョ、変な感じだぞ。
フー…。中に入ってしまった!

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