プラスチックは微生物で分解できないのですか?
今のところ、微生物を目にみえるほど、分解できる微生物は見つかっていません。しかし、多分、かびのような微生物で分解できるものが見つかるか、あるいは、少しだけ分解できる微生物を突然変異や遺伝子組換えなどで育種して、プラスチックを分解する微生物として利用できるかもしれません。
微生物がプラスチックを分解しにくい理由の一つは、プラスチックが「溶けていない」ことです。
微生物、特に水の中に住む細菌は、水に溶けている栄養分を吸収して(なぜ水は生体物質として不可欠なのですか?で説明しています)生きています。土の中に住んでいる細菌も、食品や皮膚の上にいる細菌も、そこにあるとても小さな水滴の中に住んでいて、その水滴の中に溶け込んできた栄養分を使っています。一方、かびのような微生物は、やはり微小な水滴から水分を補給していますが、腐った木に菌糸を使って取り付いてそこから栄養分を取り込むこともできます。この場合と同様に、プラスチックをかびの入った水の中に置いて、そのかびをプラスチックに取り付かせ、分解をさせることが考えられます。これが、「多分、かび」と上で言った理由です。
もうひとつのやり方は、プラスチックを溶かしてしまう方法です。工業的に作られているプラスチックは水には溶けませんので、この場合には、プラスチックの溶ける有機溶媒に溶かすことになります。有機溶媒の中では、通常の微生物は生きていくことができません。しかし、微生物の中には有機溶媒耐性菌といって、有機溶媒があっても、その中で生きていけるものがあります。たとえば、トルエンと呼ばれる有機溶媒は生物にとって有毒な有機溶媒で、ペンキを薄めるシンナーに使われますが、私たちはそれをなるべく吸わないようにしなくてはいけません。そのようなトルエンが存在していても、溶媒耐性の微生物は生きていられるので、もし、このような溶媒耐性菌にプラスチックを分解する能力を持たせれば、効率よくプラスチックを分解できることになります。
プラスチックにはいろいろな種類がありますが、ポリエチレンなどは炭素と水素しか含まれていないので、塩素を含む塩ビ(ポリ塩化ビニル)より、微生物にとって分解しやすいと思います。もう一つ、プラスチックには可塑剤と呼ばれるものが含まれていますが、これの中にも分解しにくいものがあるでしょう。
まったく発想を転換して、微生物が分解しやすいプラスチックを開発することも試みられています。また、実用化されつつあるものもあります。このようなプラスチックは生分解性プラスチックと呼ばれ、乳酸をたくさんつなげたものとか、でんぷんを他の繊維に混ぜたものとか、いろいろなものが作られています。
これからも、私たちがプラスチックから受けてきた恩恵を受け続けるため、また、ごみとして捨ててきた使用済みプラスチックの問題を解決するため、プラスチックを分解できる微生物を開発したり、生分解性プラスチックを普及させたりすることが大事になっています。