微生物はどうやって増えるのですか?
私たち人間は父親と母親がいて、その両親の性質を受け継いだ子孫として生まれてきます。私たちの生まれ持った性質(生まれた後の環境や教育によって獲得する性質でないもの)は、父親と母親の両方の性質を半分ずつ受け継ぎます。これを『遺伝』といいます。このように父親と母親の両方の性質をバランスよく取り入れて、子孫を作ることは、かなり正確で複雑な仕組みが必要です。たとえば、遺伝による性質を決めているのは遺伝子ですが、父親の遺伝子を母親の遺伝子のある場所まで運んで(つまり、精子を泳がせたりして卵のあるところまで行かせたりして)、そこで、うまくひとつの精子だけが卵に入り込む(複数が入ると互いにけんかしてしまう)仕組みをきちんと作っておかないといけません。また、入り込んだ父親のそれぞれの(鼻なら鼻の遺伝子、指なら指の遺伝子)遺伝子を、同じ遺伝子を持っている母親の遺伝子のところに、うまくペアを作らせなくてはいけません。
これは、性の違いがあるということで「有性生殖」とよばれている生物の増え方です。この有性生殖は、手間はかかるけれど、いろいろな性質を持っている子孫を増やすときに有利です。そして、「少なく生んで大切に育てる」生物が取っているやり方です。いわゆる微生物と呼ばれているものでも、たとえばカビやキノコなどは、このような有性生殖をするものが在ります。カビの胞子や、キノコの食べる部分にできる胞子は、有性生殖でできた子供です。
次に紹介するのは、無性生殖です。これは性を持たない増え方で、いちばんわかりやすいのは、植物の挿し木を考えればよいでしょう。たとえば、ポトスの枝を切って水にさしておくと根が出てきます。ポトスと同じように、カビでは枝の代わりに菌糸と呼ばれる糸状の枝を伸ばして生きています。そのような枝を伸ばして増えると、私たちがよく目にするいわゆるカビの塊ができます。
カビやキノコのような、私たちと同じようにいくつもの細胞がつながったまま増える微生物はこのような増え方をしますが、酵母や多くの細菌のように、ひとつひとつの細胞が別々に存在しているものでは、違った増え方をします。ここでは、代表的なふたつの増え方を紹介しましょう。まず、一つ目は、酵母に見られる出芽と呼ばれる方法です。これは、餅を温めて膨らませたときと似ています。餅を焼くと、その一部の表面が割れて、そこから中身が膨らんできます。餅の場合は、膨らんだ中身がもとの餅から離れることはありませんが、酵母の場合は膨らんだ部分にも、もとの酵母の遺伝子をはじめとする必要なものがすべて入れられて、子供として独立します。このようにして、酵母の細胞から新しい子供ができますが、そのときに、もとの酵母の細胞には出芽した痕が残ります。何回も出芽をして、出芽痕で表面が覆われてしまうと、もう出芽ができなくなります。
もうひとつは、細菌のような小さな微生物が行う分裂と呼ばれる方法です。これはもっとも単純な増殖法で、有性生殖とは反対に「産めるだけ産んで、あとは本人に任せる」方法です。たとえばソーセージ状の細菌が分裂で増えるときには、ちょうどソーセージが長くなっていって、一匹分の二倍の長さになったところで真ん中にくびれができてきます。そして、そのくびれが深くなっていって、最後には二つに分かれます。このときにはどちらが親でどちらが子供化という区別はありません。これは、ほかの生殖と大きく異なる点です。