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昭和49年〜平成5年(日装時代)

NHK教育テレビで、英国服地を語る

日装では毎年4月の末に輸入服地特集号を発行している。タブロイド版120ページの紙面には、輸入服地の情報がぎっしり詰まっている。大手商社の輸入服地課長が新しい人に替わると、業界の実情を知るために、まず、これに目をとおしたぐらいで、「輸入服地のバイブル」、「輸入服地の羅針盤」といわれてきた。

英国の毛織メーカーにももれなく配布しているので、どの会社を訪ねても応接室に置いてくれていた。海外発送分には英文のサマリーを付けて発送しているため内容の大筋はつかんでもらえた。しかし、一部分だけ見せられると、さらに詳しい情報が欲しくなるのは人の常。日本のエーゼントやインポーターにこの頁に書いてある内容を翻訳して欲しいといった依頼が寄せられ、「ただでさえ忙しいのに余計な仕事を作ってくれた」と小言を聞かされたこともある。

イタリア製の毛織物が、破竹の勢いで売上げを伸ばし英国品を王様の座から引き下ろしたしたときは、誇り高き英国人のプライドをいたく傷つけたらしく、日本洋装新聞の輸入特集号にイタリア関係の記事が多すぎると、クレームが付き、英国総領事館経由で抗議の申し入れがあった。

あわや国際問題に発展するところだったが、事情をよく説明して、納得してもらった。
日頃の交流がなければ大事になっていたかもしれない。

輸入服地特集号の豊富な情報に目をとおしたうえで、その内容が正確なのを信用して、NHKからテレビの出演依頼がやってきた。教育テレビで、「経営新時代」のタイトルのもとに各業界の問題点、将来の展望などを専門家に語ってもらう連続番組で、英国の毛織物を取り上げてみたいというのである。

東京・赤坂に立派な自社ビル建て、その一角にいかにも高級注文服店らしいシックな雰囲気の店舗を構える上原洋服店。そこの社長・上原崇市氏が洋服店の立場から、私は専門ジャーナリストの目で見た英国服地を語ることになった。

上原さんは趣味が乗馬で皇族の乗馬服をよく縫っていた。技術的にも先代が全日本紳士服技術コンクールの審査員を務めたくらいで、その水準の高さには定評がある。海外通で英国の毛織物事情にも精通している人である。

アナウンサーの質問に答える形で、時折、グラフや写真を使って説明する形になった。
あらかじめ取材したネタをもとに、NHK側で30分で終わるように台本を作ってあり、これを見ながらしゃべるので、ちょっと勝手が違う感じがした。tv

当時カラーテレビはあったが、全国的にみると普及率は低かった。出演した番組もモノクロームだった。放映されたのは昭和
49年4月11日の午前7時からの30分。それに先立ち大阪城公園のすぐ南側・馬場町にあるNHK大阪放送局でビデオ撮りが行われた。

ドーランを顔に塗られて照明を当てられると、頭から湯気が出ているのではないかと思うほど暑かった。我々は今日1日のことだが、毎日がこのような作業を強いられるアナウンサーの苦労の一端が伺えた。

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品質の英国、ファッションのイタリア

輸入服地、一般には「舶来服地」といわれているが、「舶来、上等」という言葉があるように高級注文服の素材としてよく利用されていた。ことに日本人は世界のどの国よりも高級品を好んで買った。

終戦後に毛織物の統制が解除されてから長らくの間、英国製の毛織物は1位の座を守っていたが、ファッション感覚の良さを武器にして、イタリア製品がぐんぐん売り上げを伸ばしてきた。ついに英国品に追いつき、追い追い抜いてしまった。

今後の英国製紳士服地はどうなるのだろう。その運命は如何に・・・と、いうのがNHKが建てた粗筋で、これに私と上原さんがそれぞれの立場から意見を述べた。

古い機械を使いこなし、ゆっくりと時間をかけて作る英国品と新鋭機を使って織り上げ、英国品にはない大胆な色柄で、ファッション感覚の優れた消費者の心をキャッチしたイタリア品の対比、気候、風土、水、職人気質によって、同じ原料を使っていても製品に差が出ることなどを分かりやすく説明した。

英国品とイタリア品の一番大きい違いは、羊毛を糸に引く段階で英国はキャップ方式、イタリアを始め世界の他の国はリング方式をとっていることである。
紳士服地としては能率は悪いがキャップ方式の方が風合いの優れた服地ができる。
伝統の技術に裏づけられた「品質の良さ」が英国の売り物とすれば、イタリアは「ファッションセンス」が一番の売りとなっている。
消費者の志向がそのどちらに向いてるかによって売り上げが左右されるだろう。

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電波媒体の影響力に驚く

イギリスにはウールン・マーチャントという、世界の有名テーラーに販売網を持ち、1着という小口の注文にも応えられる独得の販売組織がある。ウールン・マーチャントは各社共に英国品に力を入れているので、高級服地の分野では相変わらず強い存在であることも話の中に入れておいた。

上原氏は高級な服地はちょっと触ってみるだけで判る。ことに布にハサミを入れるとその感触で原料の善し悪しが判断できる、最高の原毛を使い熟練した職人が、時間をかけて織り上げた服地はシワになり難く、シワになっても直ぐに戻る、と、自店で販parabra売している最高級の洋服地を示しながら、テーラーの立場から英国服地の良さを語った。

朝の七時,それもあまり面白くない内容ながら、流石NHK、見ていた人がたくさんいたようで、「あの番組を見たよ」という電話をあちこちからもらった。改めてテレビという電波媒体の影響力の強さを認識させられた。

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ラジオは札幌のSTVで

札幌の名所・時計台が4時を知らせると同時に始まる番組がある。STV札幌テレビ・ラジオ局のSTVホットライン・ドライビングパートナーである。名前の通り車を転がせながらラジオを聴いている「ながら族」向けの番組である。

スタジオと電話を結んでのインタービューで、生でオンエアされる。1回目は平成3年7月3日に放送された。

高校生中心に「ベルボトム」が流行しているが、これはどんなもの。パンタロンとの違いは・・・などについて説明して欲しいというのがテーマ。

ベルボトムは書いて字の如く裾がベルのように広がったズボンのこと。水兵さんがはいているあのズボンである。海にはまったときに裾巾の狭いズボンは体にまといつhokudaiき脱ぎにくいが、裾広がりにしておくと、その心配がないので、水兵の服はどこの国でもベルボトムにしている。

以前にベルボトムがはやったのは,昭和44年で次の年にピークを迎え、50年には完全に消えてしまった。それがまた復活してきたのだという。高校生だけの流行で、一般に影響を及ぼすことはないだろうと答えておいた。

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「ズボン」は女性の下着?

パンタロンはフランス語でズボンを現す言葉。イタリアではパンタローネ。これは道化役を指す。道化役の履いていたズボンのスタイルということで、パンタロンと呼ばれるようになった。

ちなみにズボンは立派な日本語。アメリカではパンツあるいはスラックス、イギリスではトラウザース。ズボンの発音に似た言葉はどこの国にも見あたらない。ただ一つフランス語のジュポンが近いが、これは女性の下着のこと。

明治のお偉方がフランス女性と浮気をして、脱ぎ捨てた自分のズボンを指さして「あれは何というのか」と聞いたところ、かの女性が自分の下着と勘違いをして「ジュポン」と答えたのがズボンになったという。面白い話だが、少し出来すぎるように思う。

一番単純なのは「ずぼん」とはくから「ズボン」というもの。明治の初期には車夫がはいているような股引型の裾の狭いものが中心だったことを考えると、なるほどと頷きたくなる。

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デパート、郊外店の洋服戦争

郊外に大きなスペースの店舗を持ち豊富な品揃えと安値を武器にサラリーマンの人気をさらった郊外型量販洋服店。モータリゼーションの普及にも助けられて、郊外へ,郊外へとその勢力を広げていった。それまでは交通の便の良い商店街でしか洋服は売れないとされていた。当然土地代が高くなるので、広いスペースをとることができない。

1店平均15坪、約45平方メートルが洋服店の平均売り場面積。この広さならぎっしり商品を並べても200着が精一杯だ。洋服はサイズビジネスである。色柄にバラエティを付けると、サイズが揃わない。サイズ面を充実すれば、色柄が単調になる。せっかく来店したお客もサイズ、色柄の面で要望に答えることができずに帰らせることも少なくなかった。

郊外型量販店はこの盲点をついてできたものである。小売店だけではなく百貨店すら影響を受け、売り上げが減少した。

バブルが弾け市内の地価が安くなり、中心地の賃貸料が低くなった風潮にのって、郊外に向けられていた郊外店型量販店経営者の目が都心部にも向けられるようになった。デパートとも全面戦争の趣を示してきた。
デパートが背広は「紳士の鎧である」と言えば、量販店は「紳士の制服」だと反論する。

STV札幌テレビ・ラジオ局から2回目の電話取材を受けたのは、平成5年5月27日のことである。デパートで売っている洋服と量販店の服はどこが違うのか。良い洋服を選ぶポイントは・・・という質問だった。

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郊外型量販店の洋服が安い理由

洋服を安く売るための仕掛

1、土地の安いところに店舗を持つ。
2、店舗の建築、内装にお金をかけない。
3、買い取りで大量に発注する。
4、縫製を国内に限らず、人件費の安い国を利用する。
5、サラリーマンの通勤着である背広上下服(スーツ)を中心とした品揃え

百貨店の洋服が高いのは

1、土地の高い都心部にある
2、店舗はもちろん、内装にもかなり金をかけ、ムードをだしている。
3、一部買い取り商品もあるが、委託商品が多い。
4、メーカーからの派遣店員のコストが原価に加わっている。
5、良いもの中心とした仕入れ。国内産かヨーロッパなどのファッション先進国のものが多い。
6、あらゆるライフスタイルに対応するため、フォーマルウェアからカジュアルまで揃えているので、販売効率がよくない。

どちらで買うか?それは個人の選択による。背広は所詮「サラリーマンの制服」、そんなに高いものは要らないと思う人は量販店へ。
いや、「背広は男の鎧」である。ビジネス戦線で生き残るためには、ある程度個性が主張できる服が必要と考える人はデパートでどうぞ。

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安い服から良い服を見付けるコツ

1、ミシンの縫い目が曲がっていない。

これが曲がってるようでは、技術水準の低い国で縫製されたもので、直ぐに駄目になる。

2、洋服がシワになっていないもの。

一般的に店頭に飾る洋服は、プレスが効いてシワになっていないはず。シワになっているのは、在庫として倉庫に眠っていた古い商品。

3、柄あわせのできているもの。

ストライプ、チェックの服はポケットなどで縞が通っているか、チェックが合っているかを調べる。

4、ツキ、タスキの出ないもの

試着したとき方から胸にかけてたすき状のシワや背中の上部突き上げたような横シワが入っているようなら,身にあっていない証拠、こんな服は買わないこと。

文章に書いてみると難しくなるが、クェッション&アンサー方式の会話だから、車を運転しながらでも、分かってもらえたのではないかと思っている。

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新聞社はサービス業でもある

これ以外で関西のテレビ局のクイズ番組にも何回か出たが、記録も、記憶もなくなってしまっている。

何か疑問が生じたとき、何かを調べたいときに、どこに尋ねればよいのか、連絡先が網羅されている便利な本「情報源」が講談社から発行された。

これに「ファッション関係の情報は株式会社日装へ」と紹介してあったためか、俄然電話が多くなった。女性のファッションについてのものには、「紳士服が専門なので・・」と、断るしかなかったが、紳士服に関してはできる範囲で親切に答えるようにした。

業界の専門家からは、フォーマルウェアの着用マナーやヨーロッパの最新ファッション・トレンドについての質問が多かった。もちろん輸入毛織物や経営問題についても、よく質問を受けた。広告代理店は宣伝計画の立案に、マスコミからは事実確認のために、学生さんからは卒論の資料に・・・といった具合だ。

新聞社はサービス業の一面を持ち合わせていなければならないことを、強く認識させられた。
予想もしなかった問題が寄せられることもある。時間をもらって資料を調べることも少なくなかったが、自分自身にとっても勉強になるので、いろいろな問題に誠意を持って取り組ませてもらった。ごく専門的な質問には、業界団体などを紹介した。 

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