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(その2)
国旗・日の丸について
| 戦前、戦中の日本では祝祭日には、学校はもちろん、各家庭でも日の丸の旗を門口に飾るのが習慣になっていた。祖父が自ら経営していた牧場をやめ、その跡地に数棟の2階建ての長屋を建てた。30数戸の賃貸住宅にして、貸し家業に転身した。父はその一画で薬局を開いた。今でいう業態変更だが、わが祖父ながら、なかなか思い切ったことをしたものだと思う。 きつかけは、すぐ近くに飛田遊郭が出来ることになったからである。歓楽街の近くで何時までも牧場を続けることは出来ないだろうと読んでのことだ。 家主の体面を保つために、長屋の住人に負けておれない・・・という訳でもないと思うが、隣・近所より一回り大きいサイズの国旗が、わが家に用意されていた。 |
| 国旗を支える竿は神武天皇の弓を表し、白と黒に交互に塗り分けられている。その先端に金玉を取り付ける。慶事はそのまま使うが、弔辞には黒い布を被せる。金色の玉は神武天皇の東征時に弓に止まり、敵の目をくらませ、勝利に導いた金色の鵄(とび)を表している。日の丸の旗は太陽、すなわち、天照大神の象徴である。 国旗の持つ意味など深く考えずに、祝祭日には店頭に旗を飾るのが面白くて、いつの間にかその役割を引き受けるとになった。子供は誰もがそうだが、非日常的なことが好きである。平生はしまい込まれている日の丸を自らの手で掲げるのは、楽しいことであり、その日がくるのが待ち遠しかった。子供のころ祝祭日のことを大人たちが「旗日」と言っていたが、旗を出す役割を引き受けてから、その意味がよく分かった。 |

| 日の丸の取り扱いについては、けっして粗末にしないよう。両親、先生、周辺の大人から注意されていたので、踏んづけたり、物の下においたりはしなかった。国旗に対しては一種独特の畏敬の念を持って接していた。右翼思想の持ち主ではないが、自分の国の旗をあまり粗末に扱えないという単純な考えからくるものだ。 日の丸の旗についてはそれぞれ思い入れがあるらしく、私のように祝祭日だけがこの旗との接点になっているもの、この旗と共に戦場に出向いた人、この旗を持った日本兵に思い出したくもないひどい目にあったアジアの人々。同じ白地に赤丸の旗を見ても、湧き起こる感情は当然違ってくる。 なにしろ戦時中は占領したときには、その証として、一番先に日の丸の旗を揚げることになっていたので、勝利の美酒に酔って、見上げる日の丸の旗と、戦闘に敗れて、明日の命も判らない捕虜、激しい戦闘に終止符が打たれほっとした気分で眺める民間人では、日の丸を見たときの印象は違っていて当然だ。 私だけのことかもしれないが、われわれの世代は日の丸に対してニュートラルで、年令が 4〜5歳ほど上になると、可成り厳しい見方をする人が多くなるように思う。また、当たり前のことだが日本人よりアジアの人々の方が、日の丸に対して拒否反応を示す人は多い。 |
| 30年も前のことだが、初めてヨーロッパを訪ねた時に国旗について、英国と日本の間で大きな考え方の差があることを知った。 われわれ日本人は国旗を本来の用途以外には使わないが、英国の国旗であるユニオンジャックは帽子、靴下、ティシャツ、ハンカチ、ショッピングバッグ、メモ帳、鉛筆などあらゆるものに使われている。 一番驚いたのはファッションショーで女性モデルがユニオンジャックをデザインしたホットパンツを穿いて舞台にできたことだ。日本だったら国旗を下半身につけたりすると物議を醸し出すことは、火を見るよりも明らかである。 他国旗ながら「こんなことをして良いのだろうか」と、一種のカルチャーショックを覚えた。英国王室も国民も国旗のこのような取り扱いについては、余り神経質になってないようで、特別なクレームもつかなかったようだ。 |

英国国旗(Union Jack)
| 国旗だけの問題ではない。英国の夕刊紙はセンセーショナル・ジャーナリズムとして有名である。その格好の標的が英国の皇室である。動物的な鋭い嗅覚で後続のスキャンダル、失態などをかぎつけて、記事にする。恋愛など完全にプライベートに属することでもお構いなしだ。 英国の夕刊紙は日本のように宅配制がない。総て駅や道路際でのスタンド販売に頼っている。派手な見出しで、一般市民の関心を引くことが、最良の販売促進活動になる。 英王室と夕刊紙の葛藤は毎日のように続く。国旗が変な使い方をされ、ファッション業界の話題をさらったところで、いちいち問題にする閑は内意のだろう。 真偽のほどは確かではないが、ロンドンのソーホー地区にあるストリップ劇場では開演に先立ち、国歌を斉唱するという。 同じ島国であり、車の左側通行も一緒である英国と日本では「国旗」、「国歌」についての認識は大きな違いがある。 |
| もちろん、日の丸の旗は白地に赤い丸という単純なデザインでから、ホットパンツには使いようがないと思うが、ユニオンジャックは赤、紺、白の3色使いで、デザイン的にも面白いので、あらゆる商品に応用しやすい。英国の場合はユニオンジャックを国を代表する権威の発揮機能とデザインの素材として使用するユニオンジャックの2つに上手く使い分けしているのにたいし、日本では国民感情として前者としての使い方しか認めない環境に置かれていることに原因があるように思える。 印刷関係の仕事で各国の国旗を取り扱うことが、度々あったが、逆さまになっていないか,裏焼きで左右が反対になっていないか、ずいぶん気を遣ったものである。また、親善レセプションの場で国旗を装飾として用いる場合も、設営担当者に注意を促すのと同時に、自らのチェックを入念に行うなどの対策を講じたものである。使用を誤ると相手国に失礼になるし、時には国際紛争に発展する危険性もある。 同じ国旗でも使う場所、使われ方によって評価が変わってくるから、一元的な価値観を押し付けるわけにはいかない。 |
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