![]()
![]()
(その1)
国生み、国引き
| 天の神様が天下って地上にやってくると、つまり人間になると、どのようになるのか、天孫降臨のくだりには興味があった。しかし、国民学校の教科書に取り上げられている、あるいは先生が教えてくれる神話は想像以上に人間くさく、「神代」と「人代」とは大きな差は見られなかった。また神様の世界は分業が発達していたとみえ、実に多くの神様が存在している。あまりにも多いので、「天下り」ではなく、大陸からの渡来人のことを神様と呼んだのではないかという説もあるくらいだ。 神様の総てが渡来人というのは、飛躍しすぎの感は免れないが、相当数の神様が大陸からやってきて、神様を名乗ったことは事実だと考えると、神話が人間くさいのは当然のことといえよう。 天孫降臨の話しも期待するほどドラマチックな場面はなかった。天照大神は天上から地上の「豊葦原の瑞穂の国」(古代日本)を観察して、自分の息子が治める国としては、オオクニヌシ(大国主)の支配する「葦原の中つ国」が良かろうと判断した。 |
| 最初に派遣された神は大国主に丸めこまれ、3年間連絡がなかった。次の神は妻を与えられて美濃の国に8年間も住んでいた。天上の住み心地にも増して、地上の居住環境は良かったのかも知れない。 天照大神はあまりにも派遣した神々から連絡がないので、雉を偵察に出したが、これも矢で打ち殺されてしまった。 3度目の正直とばかり建御雷之男神(タケミカズチ)が天鳥船(アメノトリフネ)とともに出雲に天下ってきた。 タケミカズチが葦原の中つ国を平定した後、忍穂耳命(オシホミミノミコト)の次男であるニニギのみことが宮崎県の高千穂のクジフル岳に天孫降臨した。邇邇芸命(ニニギノミコト)は天照大神の孫。 |
| 「豊葦原の瑞穂の国」は何人もの神が任務を忘れて長期滞在するほど魅力のあった国であり、見目麗しい女性がいたことが判った。浦島太郎の竜宮城伝説と似たストーリーのように思えた。また、神の国からの天下りは1回だけと信じていたが、何回もあったようだ。 スペースシャトルのように使い捨てではなく何回も使える便利な交通機関を持ていたのだろうか。いとも簡単に天と地との間を行き来している。 それとも神の国は天空にあると思っているのは、人間どもの誤った認識で、朝鮮半島、中国、あるいるは印度の何処かにあって、舟でやってきたのかも知れない。 なんという無礼な神を冒涜した話、「そこは神様『チチンプイプイ』と呪文を唱えれば、キントン雲のような便利な乗り物がやってくるのだ。人間の浅はかな知恵では理解できないだろう」という天の声が聞こえてきそうだ。 |
| 神代は現世と色々なことが違っていて当然だ。神代の様子を紹介する神話の世界を覗いてみよう。 国民学校へ入学早々、国語の教科書に出てくるのは「コマイヌサン ア」「コマイヌサン ウン」である。神社に親しみを感じさせながら、興味を持たせる。修身でも神社参拝の作法を簡単に説明する。宮参り、お正月といった生活実感から神様の存在を教えていく。 神様は遠くにある存在ではなく、身近なものだと教えるのは良いことだが、一方で現人神である天皇陛下を神聖なものとするためか、一般庶民からかけ離れた遠い存在の方としてまつりあげので、子供の頭の中はいささか混乱をもたらしていたようだ。 |
日本の国がどうしてできたのか。今の子供だったら「ビッグバン」と答えるだろう。神話ではこうなっている。
遠い大昔のこと、いざなぎのみこと、いざなみのみことという、お二方の神様が いらっしゃいました。
このお二方が、天の浮き橋にお立ちになって、「天のぬほこ」という鉾をおろし て、海の水をかきまわしながら、おあげになりました。すると、海の水のしずく がしたたり落ちて、一つの島となりました。
「国生み」の話しは712年の「古事記」、720年の「日本書紀」に収録されている。
この島は「おのころ島」と呼ばれ、今の淡路島だ。お二人は数多くの島をつくり大八洲を形作っていった。
天の浮橋ならぬ明石大橋が架かって交通の便が良くなった淡路島では、日本で一番初めにできた島が淡路島である神話を有力な観光資源として大いに利用している。
| 「国生み」とは少しニュアンスは違うが「国引き」もある。 教科書ではこのようになっている。神様が国を広くしたいと考えて、海の上を眺め余った土地を見つけると、綱をかけて引き寄せると、大きな舟のように、ぐんぐんとこちらへやってきたという。 「こっちへ来い、えんやらや」 神さまは その土地を つぎあはして 国を 広く なさいました。 先生から「国引き」の話を聞いたあと机を並べている友人に聞いてみた。「神さんは偉い力を持ってはんねんやなぁー。運動会の綱引きはなんぼ力を入れても、こっちへ引っ張られへんのに・・」と私。「お前、アホやなぁ。赤組みと白組みとが、引っ張り合い、しとおるからや。みんな同じ方に引いてみろ、すごい力になるで、綱を太うして、もっと人の数を増やすと重いものでも引っ張られるやないか・・・」と友人。 友人の話はまだ続く。この学校、全員で懸命に引っ張る、それでダメなら、隣の学校にも 応援を頼む、大阪中の生徒が全員集まれば、小さい島ぐらいなら引き寄せられる・・・と空想の世界が限りなく広がっていく。最後に彼が言ったのは「しかし、神さんはすごいなぁ、一人か二人で引っ張るんやからなぁ。」 |
| 世界各国にはいろいろな神話が存在するが、国の出来上がる過程を書き記したものは、日本以外には無いという。広い海原を眺めていた神様が「ここに国をつくると回りを海に囲まれた美しい国が出来るだろう」と考えて国造りを始めたのだろう。神話の世界では、日本が大陸から分離したという説はまったく考えられなかった。 鉾に何かの神通力があり海底火山の噴火を誘発したたのか、たまたまタイミング良く海底火山が爆発、その隆起により日本の国が出来上がったと考えるは現代の科学的な見方である。 しかし、これでは面白くも、可笑しくもないので神話にならない。だから、話の流れを逆にして、神話の謎の部分を自己流で解釈し、新説を作り上げていくのも楽しいものである。 |
| 神話には話を面白くするために、中国の「白髪三千丈」式の過大な表現を採用したもの、真善美など、ものの本質に関わるもの、争い、死をテーマにしたものなど様々だが、自然現象を脚色した素朴な話も少なくない。それだけに、いろいろな目的にも利用される。 教科書に掲載し、それを教えることで、同一の皇国史観を少国民に持たせるのも、利用法の一つ。 淡路島の場合は、神が国を作られたときに一番先に出来た島であることをPRして、淡路島のイメージアップを図るために考えられた戦略で、日本神話を観光資源の一つとして平和利用した例だが、大日本帝国は「国生み」「国引き」を領土拡張を正当化するための言葉として利用した。戦争によって領土を拡大することは、神の世界でいう「国生み」、「国引き」と同じことで、神も認める正当な行為だというが、他民族の犠牲や国際紛争のネタにならない行為なら、神のOKも出るかも知れない。しかし、戦争中の「国生み」は、武力によって我がものとしたのである。ここまで来ると神話を拡大解釈し、自分の都合のいいように利用したと言われても仕方がないだろう。 |
| 現人神 | ホーム | 天の岩戸 |