吾輩の主人は、ファッション関係のジャーナリストを職業としていたので、一般のサラリーマンよりはるかに忙しく、東京や地方への出張も多かった。海外にも在社中に26回も出かけている。地元大阪にいるときでも帰宅はいつも午前さまだった。近所では「母子家庭」といわれていたほどだった。 日ごろの疲れが一挙に出たのか、ある日会社で仕事をしていると、急に頭がクラクラした。フロアーが浮き上がり傾斜がついているように見える。主人にとっては初体験である。 血圧を測ると最高が160、最低が106だという。これまではどちらかといえば低血圧気味で、最高が106くらいだったので、頭がクラクラするのは当然のことだ。
「脳梗塞の疑いがあるので、大きな病院で検査するように・・・」診療所のドクターの言葉に驚いた主人は早速、箕面市民病院で頭のCTを撮影しててもらったが、結果は異常なし。写真に映らないほどの細い血管が梗塞したのだろうということから、一過性の虚血発作と診断された。軽い脳梗塞で、これまででも気付かないだけで、4、5回は起こっているはず。地震と一緒で小さいのをちょこちょこやっていると、ドカーンと大きなヤツがこないから・・・という医師の説明を聞いて、喜んで良いのか、悲しんで良いのか、複雑な表情をしていた主人の顔は今でも覚えている。 吾輩は身を隠すのが上手く、CTにもMRIにも映らないので、軽い脳梗塞と最近患者が増え社会問題になっているアルツハイマーとよく間違われる。 CT,MRI,エコーなど各種の検査機械も精密なものが出来、血液検査も短時間で詳しいデータが得られるようにな った。これらの検査を組み合わせると、殆どの病気が判明するが、吾輩の仲間だけは見付け出す検査方法がない。 ちなみに吾輩の主人の血液検査は総ての項目が標準値の範囲に収まっており、これだけで見ると「健康優良爺」そのものである。
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