名前、住所、生年月日などを聞かれたあと、今の季節は、今日は何日、総理大臣の名前は、などの質問を受ける。100から3つずつを順に引き算をして答えを出す、袋の中に入っているハサミや定規を一覧して覚え、何が入っていたかを思い出す・・・などの知能テストが行われた。吾輩の悪戯以外に、呆けの症状が出ていないかを調べるためだ。次に通行量や入場者数を数えるカウンターを1分間に何回押すことができるか、三角形、四角形、渦巻きなどの図形をどれぐらいの時間がかかり、どれだけ正確に書けるか・・という作業能力のテストも行われた。 神経内科診療のための最新診断機器(ヘリカルCT、MRI、SPECT、筋電計など)や治療機器(血漿交換装置)を備えており、月〜金曜日の毎日、神経内科専門外来を開いてる。 MRIも新鋭機で映像の鮮明さには定評があるという。 吾輩は前回にも増して慎重に身を隠したので、MRIに映し出されることはなかった。MRIでは右脳が左脳より少し大きい、小脳がわずかながら小さくなっているのが分かった程度である。 ドクターの話では脳梗塞や脳の血管障害があれば、MRIに写り込む、消去法で何もないということがパーキンソンの証明になるということだ。 総合的な診察の結果は「立派なパーキンソン」という宣告だ。身を隠してちょこちょこと悪戯をしていた吾輩の存在が公のものとなった瞬間である。その筋の権威者から、治療法が未だに判らない難病のひとつ、「パーキンソン」だと正式に告知を受けた主人は一瞬「酒も飲まず、タバコも吸わない、この私が・・・しかも、社長に引き続いて二人も・・・」と神の悪戯を恨んだという。 主人は65才まで会社に席を置き、退職後は好きなヨットを満喫し、ゴルフにも行き、のんびりと海外旅行でも楽しむ一方、頭がボケないようにコンピュータ、インターネットで遊ぼうというキャリアプラン、ライフ・プランを立てていた。57歳での「パーキンソン発病宣告」は、これらのプランが水泡に帰してしまう、年金支給まで3年という期間がある、現在している仕事をスムーズに委譲していかなければならない・・・様々な思いが頭を駆け巡ったことだろう。神様を恨む気持ちはよく理解できる。 しかし、ドクターより「この病気はマイナス思考が病状を悪化させる。絶えず前向きのプラス思考で臨み、病状をこれ以上悪化させないことが最良の治療法である」と聞かされ、すぐに吾輩と「平和条約」を結びたいと申し入れてきた。条約の中身は「吾 輩が体内に止まることを認める代わりに、急激に身体を傷めるような悪戯をしないでほしい」という主旨のものである。 薬は平成4年(1992年)3月よりNeodopastonとParlodelに変わった。
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