ある日、吾輩は主人に少し意地悪な質問をしてみた。吾輩の悪戯ばかりが強調され、悪者扱いを受けていると、吾輩の存在価値を疑われるからだ。「一寸の虫にも五分の魂」人間からみてどんなに悪質なウイルスや病気も神の指示により、何らかの必要性があって、この世に誕生したものである。必ず存在理由があるはずだ。
それを知らずに「病気を治そう」「健康になろう」と考えるのは人間のおごりというものだ。 「そうだなぁ」と少し時間をおいて主人が語り始めた。
A.パーキンソン独特の前傾姿勢で道を歩いていると、相手から礼を
しているように見えるらしい。すれ違う人が「おはようございます」「こ んにちは」と挨拶してくれることが多くなった。
こちらの態度を変われば相手も変わる。チョットしたコミュニケーショ ンから人間関係が深まってくることが判った。
B.健康に一段と気を付けるようになった。空気、水、健康など、身近 にあるものは失ってから初めてその価値に気付くものである。
「一病息災」の言葉通り、食物、運動、生活環境、生活習慣、ストレ ス、人間関係などに一層気を付けるようになった。
C.社会的弱者に対する理解が深まった。人間様は口では偉そうなこ とを言っているが、こと自動車の運転をさせてみると、人格、人品が 二段階ほど落ちてしまう。
おとなしいと近所で評判の人が神風的な運転をしたり、良家の子女 が前の車の発進が少し遅れると「早う行かんかい、何しとんや」と、 この人の口から出たとは思えぬ言葉が聞こえる。車の密室性がそ のようにさせているのだろう。
吾輩の主人も右半身がまだまだ使えるので、オートマ車を走らして いる。横断歩道で間もなく信号が変わるというのにゆっくり歩いてい る老人を見かけると「モタモタせずに、早く渡らんかい」と、独り言を 言うことが、しばしばあった。人間って30秒の時間を長く感じる変な 動物なのか。
自分の歩行が上手くいかなくなって、初めて足の悪い人の気持ちが 理解できるようになった。 D.人の親切心が心を打った
「人情紙の如し」と世間の情の薄さを嘆く声もあるが、病気をして厚 い人情がいまだに残っていることを発見した。電車に乗ると必ず席 を明けてくれる人がある。スポーツジムで着替えに困っているとき、 そっとうしろからシャツを引 っ張ってくれる親切な人がいる。
介護保険法の適用を受けて1週間に1回ディサ ービスを受けているが、ここの職員さんは人の名 前を直ぐに覚え、一人一人の要望を先取りする 形で身の回りの世話をしてくれる。
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