ブラックスーツ(Black Suit)

ブラックスーツに白のネクタイは「赤恥」

黒と白、無彩色の分類に属するこの二つ色は非日常的なことに対応blacksuitする
色として用いられることが多いようです。人生の最終儀式である葬儀には
「黒」を中心に白をアクセントとして使うのは世界共通の認識です。
しかし、和服を着ていた昔の日本、現代の香港では白を葬儀の色とされています。
「ヤ」の字が付く○○組の構成員は、自ら好んでブラックスーツを着用します。「そこらにいるサラリーマンとはちょっと違うのだ」という心情が洋服にも現れているのでしょう。
結婚は一生に一回の大事業といわれていますが、仮に、二回、三回とあったとしても、非日常的なことに違いありません。慶事、弔事の人生で大切なシーンでは、伝統に裏付けられた厳しい約束事があります。
ブラックスーツはごく最近に誕生した新参の礼服です。それだけに、着装のルールが確立しておらず、間違いや誤解もあるようです。

ホテルの黒服集団に「ヤクザの集会ですか」

ブラックスーツを論ずるときに決まって出てくるエピソードがあります。結婚披露宴に出席する日本の紳士はほとんどの人が、ブラックスーツを着て、白のネクタイを締めています。ホテルに滞在中の外人が結婚披露宴に出席する黒服の一団を見付け、恐怖感を抱いたという話です。
「今日はジャパンニーズ・マフィアとして有名な『ヤクザ』の集会がこのホテルであるのか、それとも地元の有名人が亡くなり葬儀でも行われているのか」と、同行の日本人に質問したということです。
ブラックスーツの先輩格であるディレクターズスーツは、第二次世界大戦が始まる前にヨーロッパで大流行しました。
日本でも1960年代にモーニングコートにかわる簡素な礼服を作ろうとディレクターズスーツの導入が考えられましたが、上下共生地の洋服の方が上等とする日本人の共通認識が、ジャケットは黒または黒に近い濃色の無地、ズボンはグレーの縦縞という組み合わせが気に入らず、黒無地の共生地でスーツをつくり上げました。
当初はダブルブレストが多かったようですが、当時の新生活運動の波に乗り、またたくのうちに普及しました。
なにしろ、この洋服を一着持っていると昼夜、冠婚葬祭に、ネクタイやシャツなどを取り替えるだけで、対応できるという便利なものです。

普及率ナンバーワンの礼服・ブラックスーツ

初めのうちは、ドースキンという名が示すように、牝鹿の皮のような柔らかさと光沢を繻子織りと特殊仕上げで表現した生地、タキシードのために開発されたタキシードクロスなどの少し厚手の素材を使った冬用のものが中心で、デザインもダブルブレストが多かったようですが、バラシア、モヘアなどを素材とした夏用も加わり、シングルブレストも取り入れて、バラエティーを増加させていきました。
モーニングコートやタキシードは持っていなくても、ブラックスーツが自分のワードローブ入っていない人を見つけ出すのが難しいぐらいに普及しています。
ヨーロッパを中心とした洋服の先進国では葬儀の時には少数の人が着用しているのを見かけるだけで、日本ほど普及しておりません。
結婚披露宴ではブラックスーツを着て出席する人は全くいません。時間、場所によって、モーニングコート、ディレクターズスーツ、タキシード、ダークスーツを着分けています。
ダークスーツというのは普通の背広で濃色のものを指します。
無地あるいは柄が入っていても、遠目には無地に見え、近くで見ると柄が分かるという程度に抑えたものです。

上衣がダブルブレストでもズボンはシングル

最近はファッション関する知識を持った人が増えたので、笑い話に属しますが、ブラックスーツが市場に出回り始めた頃、上衣をダブルブレストにするので、ズボンの裾もダブルにした方が良いのではないか、という質問がフォーマルウェアのメーカーに寄せられました。
もともと、ズボンの裾はフォーマル、カジュアルともシングルでした。ダブルが後で加わったのですが、「カフ」、「ターンナップ」、「マッキン」、「裾かぶら」などの呼び名があります。
折り返しが出来たのは、1893年、馬主でもあったイギリス下院議員のルイスハム子爵が、雨でぬかるんだパドックで、裾がよごれないように折り返した姿がスマートだったこから、多くの人が真似をしたということです。
雨が多いスコットランドでハンティングに興じていた貴族が裾をまくり上げたのが広まったという話もありますが、いずれも、雨や泥でズボンの裾が世これるのを防ぐ話が原点になっています。
発祥そのものがカントリーですから、カジュアルな洋服のズボンは裾をダブルにすることはあっても、フォーマルウェアのズボンはシングルと決められています。

ズボンの折り返しを「かぶら」というのは・・・

年輩の職人さんはズボンの折り返しのことを「かぶら」といいます。明治の初めに外国人より洋服技術を学んだとき、彼らが「Turn-Up」呼んでいるのを聞き覚え、後で字引をひいてみると、「Turnip=かぶら」とありました。「u」が「i」に代わっているだけですから、間違うのも無理ありません。覚えやすいとたちまち職人仲間に広まりました。
礼服のズボンにはそれぞれ特長があります。燕尾服、タキシードは上衣は共生地ですが、燕尾服のズボンには2本の側章が、タキシードには1本の側章が取り付けられています。
モーニングコート、ディレクターズスーツのズボンには、黒地に白やグレーの縞柄のコール地を使ったものを合わせます。いずれも裾はシングルとなっていますが、モーニングコート用の裾は靴の甲にうまくフィツトさせるため、前から後ろに掛けて斜めにカットしてあります。

ブラックスーツに白タイは禁物、着回しも考えて

服飾評論家が時折ブラックスーツの着用ルール違反を問題にします。その犯人は、「白の結び下げネクタイ」です。1970年入ってからブラックスーツに白のタイを結ぶ人が増えてきました。現在でもはこれを正しい着用法だと思ってる人も少なくありません。
しかし、礼服で白のタイが許されているのは、正夜間礼装の燕尾服に付ける白の蝶タイだけです。
ブラックスーツを礼装用として、慶事に用いるときのネクタイは、白黒の縞かシルバーグレイが良いでしょう。これなら国際ルールから外れているという非難も受けることはありません。日本では白色を慶事に用いる習慣があり、花嫁さんは白無垢で身を包んでいるではないかという反論もあるかと思います。そんな理屈が通るなら香港では慶事に赤い色を使いますので、赤のネクタイを締めても良いということになります。
洋服は西洋服です。発祥地の着用ルールを尊重することが、グローバルスタンダードに従った着こなしといえます。
ついでのことならネクタイと同色のシルバーグレーのベストを合わせて用いると万全です。
シャツをタキシードのように立ち襟のウイングカラーにして、黒の蝶タイを絞めるのも良いアイデアです。
昼間に開催されるパーティに出かける機会の多い人は、モーングのコールズボンと組み合わせるか、新たにコールのズホンだけを求めて、ディレクターズスーツとして用いられるようにしておけば、着用範囲が一段と広がります。

黒のネクタイ、白シャツで弔事はOK

ブラックスーツを弔事の喪服として着る場合は、折り襟の普通の白シャツに、黒無地の結び下げネクタイを締めればOKです。
香港では喪服に白を用いますが、日本でも飛鳥時代から最近まで白を喪の色としてきました。16世紀末に来日した、宣教師ルイス・フロイスは、その著作「日欧文化比較」で、「我々は喪に黒色を用いるが、日本人は白色を用いる。」と当時の状況を説明しています。
戦前では男子は黒五つ紋付きに袴、女子は白無垢に白帯でした。太平洋戦争中、戦死者の数は軍人または軍属の死者は1,555,308人、非戦闘員の死者は658,595人
(沖縄、中国を含む)と多く、毎日のよう葬式が続きました。白無垢は汚れやすいということで、女子も黒の五つ紋付き染め抜きに黒の帯という喪服になったといいます。
戦争が終わり、長寿社会を迎え、葬儀の数もめっきり減りました。
しかし、和式の喪服を着るとしまうときの手入れが大変と、敬遠する人が増え、近親者の葬儀以外は和服を着ないで、洋装で済ますご婦人が多くなってきました。

「黒」は非日常的な色彩、要求される高度な着こなし

ブラックスーツは冠婚葬祭専用の服ではありません。シャツやタイを中心としたアクセサリーを工夫すると立派なビジネスウェアとて、着用することができます。婦人服の世界でもブティックの店員、デザイナーが、好んで黒の洋服を着ています。店頭に立っていても目立つこともなく、一見無個性に見えますが、よく観察してみると、奥に秘められた自己主張が感じられます。
もちろん、非日常手的な時に用いられる色を使うのですから、高度な着こなしと、コーディネート感覚が求められます。
メンズの世界では日本メンズファッション協会(MFU)の専務理事・汐見一平さんが、昔からブラックスーツを日常着として見事に着こなし、この人のトレードマークになっています。
ブラックスーツが完全に第2の肌になっているようです。

過去を消した秘密機関員の制服はブラックスーツ

1997年のアメリカ 映画・メン イン ブラック(MEN IN BLACK)はその題名からも判るようにブラックスーツを着た男の物語です。
ニューヨーク市警察の若手刑事エドワーズは、ブラックスーツを着た男「K」にスカウトされ、最高秘密機関(MEN IN BLACK)の一員となります。
過去の総てが消され、「J」という名前になった彼は、人間に姿を変えているエイリアンが犯罪や侵略行為を行なわないように監視をする任務を課せられます。
ベテラン刑事役「K」を演じたトミーリー・ジョーンズが着用していたのが、MIBの特殊要員が一生着る制服、つまりブラックスーツです。過去を消された男には洋服で個人の趣味、嗜好を表現する必要もなく、ニュートラルな感覚で、激務に耐え、一日中あらゆるシーンで違和感のないスーツが求められます。
現代の多くのサラリーマンが着用しているシングルブレストの3ボタン、センターベントタイプ。袖ボタンは4個と通常より多く、礼服並となっています。
フロントボタンの間隔を詰めてVゾーンを広く見せる設計になっています。3つボタンのうち真ん中の一つだけ留める着こなしが、若者の共感を呼んだようです。

エコロジーな、究極の「黒」を求めて・・・

黒といっても色々な黒がありす。一昔前までは黒は染色業者泣かせの色でした。色に深みを出すために、赤色に染め、その上から黒を掛けるなどの苦労をしました。
クロムなどの金属を含む染料が出来てからは、コストが安く、均等に綺麗に染まるようになり、染色堅牢度も飛躍的に向上しました。
しかし、染料に含まれているクロムなどの金属は環境破壊の一因を作るとして、水質汚濁防止法で規制の対象になっています。
期待されているのが反応染料です。市場から「究極の黒」が求められ、一方では地球に優しいエコロジー商品の供給が義務づけられています。
以前に買った礼服と現在店頭で売られている礼服を並べて比較してみると、黒の色に差があることが判ります。

制電撥水、ストレッチなどで付加価値

黒の礼服地はことのほかゴミの付着が目立ちます。静電気の悪戯です。冬の湿度の少ないときには静電気が起こり、服がパチパチ音を立てたり、ドアの取っ手を持つ瞬間パチンと火花が飛んだりすることがあります。この静電気は埃を引きつけてしまいます。
カーボン繊維を少し礼服地に織り込んでおくと、静電気が逃げ、ほこりがつきにくくなります。
撥水加工をした礼服地も増えてきました。葬儀の時もテントが張られるし、結婚式は室内、撥水加工など必要がないように思われます。しかし、パーティでは食べこぼし、ワインやコーヒをこぼしたりなどはよくあることです。こんな時撥水加工がしてあると、小さい水玉になってコロコロと落ちてしまいシミとして残ることはありません。
日本独特の習慣として畳の上での、儀式、集会、宴会があります。原毛の選定、織糸段階、織組織、整理など各段階で、畳の上での儀式に耐えうる礼服地の開発に力が注がれています。ストレッチ性を持たせるのもその中の一つです。

長時間宴会も平気、「肩の凝らない礼服地

究極のアイデア商品ともいえる礼服地が日本を代表する毛織メーカー・御幸毛織から発売されています。
一流ホテルで開催される大規模な結婚披露宴は祝辞、挨拶、余興など盛りだくさんで、延々4時間に及ぶことも珍しくありません。まさに重労働です。
「ミユキフォーマル・604」は式典などで長時間同じ姿勢を保つことが多い礼服に求められる“肩の凝らない”服地のニーズに応えるものです。
従来の当社同等品に比較し、生地重量が10%軽く、伸縮性のあるのが特長で、肩を中心とした身体各部分にかかる負担を軽減するのが、開発意図だということです。
体力に陰りが見えてきた年輩の人にはうれしい商品です。さらに、ほこりのつきにくい制電加工や独自の濃色加工を施し礼服地としての価値を高められています。


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