ヘリンボーン(Herringbone)

西洋では「鰊=にしんの骨」、日本では「杉」

ツイードのコートやジャケットによく使われる白と黒、白と茶を基本の配herringbone1
色とする馴染みの深い柄です。同じ柄でも西洋人が見るとヘーリング(鰊)のボーン(骨)と映り、われわれ日本人には「杉」にみえます。
農耕民族と狩猟民族の違いがこんなところにも出ているのでしょう。
杉綾は流行に関係なく各社の新柄コレクションに加えられています。
オーバーコートやカジュアルなジャケットには、山が高く、幅の広いものを使います。
クラシックな感覚のスーツ地には、山を低くして、巾の狭いもので対応します。コート、ジャケット、スーツとあらゆるものに使えるのが、ヘリンボーンの人気を支える原動力になっています。
紳士服地の柄行は無数にあります。ヘリンボーン以外にも、柄名の由来、ソースを動物、植物、地名、人名などに分けて紹介してみました。なるほどと思えるものや身近に感じられるものが沢山あります。

ツィードの代表柄、山と谷が連続するシンプルさが魅力

柄が杉の葉の形に良く似ているところから、杉綾織、杉柄模様などと呼ばれているこの柄は、山と谷の連続する単純な柄で、そのシンプルさが幸いして、紳士服地の基本柄の一つとして、認知されています。
色使いも白と黒、グレーと黒、白と茶など、コントラストをなす2色使いのものが中心となっています。どちらかといえば英国人好みの柄で、1896年、英国にこの柄が登場して以来、流行に関わりなく、コレクションに加えられています。
特にスコットランド地方が主産地であるチェビオット、スコッチツィード、ハリスツィードなどの紡毛服地に多く採用されています。
話は変わりますが、「ヘリンボーン」という言葉は造園業界でも用いられています。煉瓦を斜めに組み合わせて鰊の骨のような山形を作っていく手法です。庭園の小道などをこのやり方で煉瓦を敷き詰めると何となくロマンチックな雰囲気が醸成されるといいます。もう一つはネックレスです。金属加工の方法でしょうが、やや太めのネックレスには山形が連続したような作りのものを見かけます。昔のギターで一部分が組木づくりになっているものも、ヘリンボーン・ギターと呼ばれているようです。

「杉」「鰊の骨」ほかに多くの別名が・・・

日本人には「杉」と映るこの柄はスコットランド人の目には「鰊(にしん)の骨」に見えるらしく、ヘリンボーンと呼ばれています。北海道の小樽にかって鰊が捨てるほどたくさん捕れたモニューメントとして、鰊屋敷がいまに残されていますが、スコットランドでも鰊が大量に捕れた時期があり、一般大衆には馴染み深い魚となっていたため、ためらうことなく、ヘリンボーンと名付けられたのでしょう。
この柄はシェブロン(袖章)、フェザー(羽根)、アロー・ウッド(矢じり)、アップ・アンド・ダウン(山と谷)、バーズ・ウィング(鳥のつばさ)、ポインテッド・ツィール(山形綾)など多くの別名を持っています。
柄を大きくするとオーバーコートやカジュアルなジャケットに最適のものとなります。
小さくするとクラシックな感覚のスーツ地用のパターンとして使えます。さらに山や谷をわざと変形させてブロークン・ヘリンボーンとして用いられることもあります。

《参考資料》 紳士服地の柄、さまざま

 動物に由来を求める柄

シャークスキン(Sharkskin)
シャークスキン、直訳すると「鮫の皮」という意味になります。柄というより、織物の表面感を表現したものです。褐色、濃青、紺などの色糸と白糸をよりあわせた杢糸と濃色の無地糸を交互に配して綾織りとした布地にクリア仕上げを施すと、鮫の肌に似た梳毛織物が出来ます。
ひんやりとした、かすかなざらつき感が特長のこの服地は、スプリングコートや合物の背広の素材として用いられます。

バーズアイ(Bird's eye)
黒、紺、茶、鼠などの濃色の地に、鳥の目を思わせるような小さな円形を配した織柄で、ティック(Tick)という別名を持っています。
日本では鳥目織り、石目織りなどと言われています。紡毛服地では太い織糸を使うため、鳥の目を正確に表現できないこともあって、梳毛織物に使われることが多いようです。

ハウンドツース(Hound's tooth)hundchk
日本では千鳥格子と呼ばれるチェックの一種です。ハウンドは猟犬、ツースは歯あるいは牙を意味します。猟犬の牙が規則正しく並んだような柄行です。同じような意味でドッグツースという表現もありますが、英国人は人間と一番長い関わりを持つ犬に敬意を表してドッグと言わずハウンドを好んで使います。
もともとディストリック・チェックの仲間とされていました。そのためか狩猟用のノーフォーク・ジャケット、オーバーコートなどの紡毛服地によく用いられます。白と黒、白と茶などコントラストの強い配色が中心となっています。
農耕民族の日本人はこの柄を見て千鳥を想い出し、狩猟民族のイギリス人は犬の牙を頭に浮かべる、文化の違いが発想の差を生み出しているでしょう。

 人、人名に由来するもの

ウインザー・プレイド(Windsor Plaid)
グレンチェックの一種です。プリンス・オブ・ウェールズの柄行を一層大きくしたもので、「大グレン」とも呼ばれています。白地に赤茶を配した派手なチェック柄の洋服を、お洒落で知られているウインザー公が、退位後に好んで着用したことから、名付けられたものです。
ただし、これはアメリカ流の言い回しで、イギリスではこの種のチェックをすべてひっくるめてプリンス・オブ・ウェールズと呼んでいます。

シェパード・チェック(Shepherd Check)
小さい弁慶格子のことです。白と黒、茶とダークグリーンというコントラストの強いものが主流となっています。ハウンドツース(千鳥格子)と似ているが、犬の牙が並んでおらず、すっきりとした単純なチェックです。
シェパードというのは「羊飼い」のことです。7世紀の末にスコットランドの牧羊者が考え出した柄だといわれていますが、多くの牧羊者が、好んでこの柄の服を着用していたため、いつしかシェパード・チェックの名称が定着してしまいました。
1800年代の終わりのころに洋服業界がこの柄の持つカジュアルな雰囲気に注目したことから一躍人気柄となり、現在でもカントリーに相応しいものとして、スポーティーなジャケットによく使われています。

ジャカード(Jaquard)
フランス人ヨセフ・ジャカール(Joseph Jaquard1752-1834)が発明した紋織機のことです。その織機によって作られた紋織物、あるいは複雑な独特の柄行を指すこともあります。縦糸が30本以上も使うことができますので、かなり複雑な柄を織ることができます。西陣織の帯、ネクタイがジャカードの代表作です。フランス読みをするとジャカールになりますが、初めに導入した人が英語読みか、ドイツ語読みに変えて「ジャカード」とをしたのが、今日でも使われています。
ジャンパーのことをジンバーと濁って発音する人がいるように、織物にかなり精通している人でも「ジャガード」と表現することがあるようですが、これは明らかな間違いです。
ジャカードの複雑な柄行で個性豊かな、遊び心に満ちたジャケットを楽しんでもらおうと、数量的には僅かですが紳士服地が商品化されています。ファンシー・タキシード、アフター6用のクラブ・ウェアにも使える凝った柄の素材です。

プリンス・オブ・ウェールズ(Prince of Wales)
ウインザー・プレイド参照。

 物、形に由来するもの

ウインドペーン・チェック(Windowpane Check)windowpaine
「窓枠」を連想させるような単純な四角形の格子柄です。もともとはタータン・チェックにバラエティを与えるための重ね格子(Over Plaid)して考え出されたものです。これが独立して一つの柄として認知されるようになったので、柄の歴史は古くて新しいと表現しなければなりません。
1876年にイングランド北部にあるチリンガム城の猟場に、時の英国皇太子(のちのエドワード7世)はチェビオット地で作ったニッカーボッカーズ・スーツを着ていきました。その柄が大変お洒落なウインドペーンで、出席した王侯貴族に強い印象を与えました。
エドワード7世の孫に当たるウインザー公爵も年配になってから、ウインドーペーンの
カントリー・スーツを身につけていました。
1967年に幾何学模様の柄が大流行しましたが、代表柄の一つとしてこの柄が多くの
人々の心を捕らえました。

ガンクラブ・チェック(Gunclub Check)
日本では「弁慶格子」といわれる柄。シェパード・チェックも同じものです。1874年にアメリカ東部の狩猟クラブが、この柄でクラブの制服を作ったことに、名称の由来を求めることができます。
昔の「羊飼い」が「鉄砲撃ち」に変わったというわけですが、広々としたグリーンのバックによく似合うスポーティーな感覚の柄です。
詳しくはシェパード・チェックの項を参照。

チョーク・ストライプ(Chalk Stripe)
黒板に白墨で線を引いたようなストライプです。フラノ、サキソニーなど、布地の表面が少し毛羽だったものには、ストライプの縁がぼけたような効果が強調されるので、この柄が採用されることが多いようです。
グレー、紺、茶などの濃色の地色に、白でストライプを描きます。ストライプの細いものはペンシル・ストライプという別名があります。
ダブルブレストのスーツや三揃えの背広地にはよく似合うので、ストライプの代表選手的な存在と言えます。
ロンドンの金融中心地シティーを行き来する銀行家はクラシックな感覚を持つこの柄がお気に入りとみえ着用している人をよく見かけます。石造りの周囲の建物に溶け込むように調和しています。

ピン・ストライブ(Pin Stripe)
ピンを刺した後の穴を思わせる小さな点が連続している縞柄のことです。点が切れ目無く続いているのはペンシル・ストライプと呼ばれています。
遠目には無地のように見え、近くで見るとストライプといった控えめな柄で、スーツ地によく使われます。

ピン・チェック(Pin Check)
ニート・チェック、ミニチュアル・チェック、タイニー・チェックなどの別名を持っています。針の先で紙をつくと小さい穴が明きますが、その小さい柄で構成されたチェックです。あまりにも小さい柄なので、チェックであることがわからない場合があります。日本では「微塵格子」とこの柄の特質をうまくとらえた言葉で言い表しています。
梳毛織物のスーツ地に用いられることが多く、落ち着いた雰囲気を持つ伝統柄の一つして定着した人気を持っています。
点をもう少し大きくした柄はピンヘッド(Pin Head)と呼ばれます。こちらはピンの頭が並んだようなイメージを持つ柄行です。

ヘアーライン(Hairline)
髪の毛のように細い柄のためヘアーラインと呼ばれています。通常はストライブとして使用することが多いようです。日本では細い筋が無数にあるということから「千筋縞」と呼ばれています。
夏の服地の一つとしてコードレーンという服地がありますが、その代表的な柄がヘアーラインです。白地にブルー、グレー、ベージュの配色が基本になっています。見た目が涼しげなので夏物に使われるケースが多いようです。

ペイズリー(Paisley)
トラッド調のネクタイやマフラーにはなくてはならない柄です。「曲玉模様」「渦巻模様」とも呼ばれる神秘的な雰囲気を持つ複雑な柄行です。カシミール模様といわれるように、15世紀にインド・カシミール地方で織られた「ブータ」と呼ばれるショールに由来を求めることができます。
一枚のショールを織り上げるのに、三年間もの歳月が必要とされ、稀少価値の高いものでした。また、カシミール模様は王侯専用として、一般人の使用は禁じられていた時代がありました。
ペイズリーはスコットランドの地名で、ここで大量生産されたショールが全世界に広まったことから、地名がそのまま柄の名となったものです。石榴、松かさを多くの色を使って精巧緻密に描かれております。ペイズリーの詳しい説明は別項に譲ります。



週刊ファッション情報によるファッション用語
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