オーダーメード(Order Made)

オーダーといっても内容はさまざま

一昔前までは紳士服は注文洋服(オーダーメード)と既製服(レディメード)のsewiingmachine
二つに分かれる単純なものでした。注文をもらってから作るのは注文洋服、つまりオーダーメードです。これとは対照的に注文をもらう前に見込み生産するのが既製服です。
明治の初期に日本に洋服が紹介されてから戦争が始まるまでは、注文服が圧倒的に強い立場にありました。戦後の昭和45年(1970年)両者は互角となりました。
現在、フルオーダーのシェアは3〜4パーセントになっています。
昭和24年(1949年)にイージーオーダーが登場してきました。
その後、消費の高度化、多様化、個性化を受けて洋服の仕立形態にバラエティが増え、消費者には耳慣れない○○オーダー、XXオーダーが市場に出回ってきました。値段もピンからキリまであります。

熟練者が一人で縫う。セビルローが原点《フルオーダー

初めは注文服からスタート
明治の初めに日本で洋服が作られるようになったときは、注文服ばかりでした。これまで足袋を縫っていた縫製職人が、見よう見真似で仕立てたのが始まりだといわれています。ロンドンの中心街にサビルローという小さな通があります。背広の語源となったといわれているこの地域には世界的に有名な注文洋服店が軒を連ねております。ここで制作される洋服が注文洋服つまりオーダーの原点です。
それらのオーダーメードの店はマーチャントテーラー、カスタムテーラー、ビスポークテーラーとも呼ばれています。ビスポークとは予約を聞くという意味です。
格調が高く、独特の雰囲気を持っていますので、少し店内に入るのに勇気がいりますが、扉を押して店の中に入っていきましょう。
まず最初にすることは生地選びです。それまでに自分が誂えたい洋服は、フォーマルウェアなのか、ビジネスウェアか、それともスポーツウェアなのか、きちんと決めておかなければならないのは言うまでもありません。

服地を在庫しない欧州のテーラー
日本の場合は洋服店が現物の生地を用意していますので、肩に生地を掛けて鏡を見ながら出来上がりを想像したり、顔写りを検討することもできますが、イギリスをはじめとしてヨーロッパのテーラーには現物の生地は置いていません。礼服地とか、サクソニー、フラノなどの無地物は何点か在庫されていますが、柄物は殆ど手持ち品がないと思ってください。
個性化、多様化、高度化するお客さんの要望に100パーセント応えるために服地を在庫していると、膨大な数となり、資金の回転率が悪くなり、経営が成り立たなくなるからです。この悩みを解消してくれるのがバンチシステムです。
目的に合った生地をバンチ見本と呼ばれる生地を30センチ四方ぐらいの大きさに切って、何十枚かを綴じたものの中から選びます。小さい見本から仕立て上がった洋服のイメージを組み立てるのは大変ですが、生地の選択の幅を広くするにはこの方式が一番とされています。
しかし自分の好み、職業、洋服の着用目的など、こちらの考えを充分に伝えると、ベテラン店員が体形、頭髪、肌色などを観察して、手際よく似合いそうな服地を何点か探してくれます。
日本の消費者は洋服店がシーズンに応じて新柄を在庫しているので、生地選びは楽にできます。いずれ日本も欧米のようにバンチ見本中心になるかも知れません。

ショートレングス、高いがバッティングなし
服地は英国製が主体です。 世界のカスタムテーラーに生地を納めているウールンマーチャントと呼ばれる毛織物の卸商がロンドンに10数軒あります。ドーメル、スキャバル、フィンテックス、ウエインシール、H.レッサーなどのブランドは日本でもよく知られています。洋服を着ていて一番嫌な思いをするのが、同じ柄の洋服に偶然出くわしたときです。
毛織物一反の長さは約60メートルあり、洋服にすると約20着分です。ウールンマーチャントは、世界に分散している注文洋服店を対象に販売しますので、同じ柄の洋服にぶつかる確率は、宝くじの一等を引き当てるより少ないといえるでしょう。
こうした一着分の生地は「ショートレングス」と呼ばれ、一般の生地と区別されています。値段も高くなっています。60メーター巻きの現反で輸入したものは、業界で「ピース物」と呼ばれています。ハダースフィールドの高級品メーカーまだ1反単位で織ってくれますが、値頃品は3反以上にまとめければ受けてくれません。
3反なら同じ柄が60着、日本のどこかで着られていることになります。運が悪ければ、新幹線のグリーン車でバッタリということも考えられます。
色や柄のセンスで一歩をリードしているイタリア製の服地もよく使われるようになってきました。
(日本で洋服を誂える場合は国産品から選択することも可能です。御幸、ダイドー、長大、中外などの一流メーカの製品は品質的にも舶来品に引けを取らず、その割には値段が安くお買い得となっています。)

医師のカルテ、テーラーの型紙。大切に保管
生地選びがすむと採寸が始まります。総丈、上着丈、背巾、肩幅、バスト、ウェスト、ヒップ、袖丈、ズボン丈などメジャーで正確に寸法を採っていきます。採寸の間にお客さんの体型観察も怠りません。肩の状態は?いかり型、なぜ肩、体型の特徴は?反身体(そり身)、屈身体(前かがみ)など、寸法に出ない身体の状態を把握しておきます。ヒップにしても同じ寸法でも出尻と平尻があります。
いよいよ型紙作りです。採寸した数字に基づき、前身頃、背、袖、衿、さらにズボンと、厚紙にラインが引かれていきます。ラインに従ってハサミで切り落としたものが型紙です。
型紙はお医者さんでいうとカルテに当たり、洋服店にとっても、お客さんにとっても大切なもので、大切に保管されています。サビルローのテーラーで型紙の倉庫を見せてもらったことがありますが、何百人分もの型紙がきっちり整理され、つり下げられていました。これは○○氏、こちらはXX氏と有名な政治家、財界人、俳優などの名前が出てきます。
服地卸商が納入した生地は水に濡れてもクリーニングに出しても縮まないように「地のし」されます。完璧を期した服地の上に型紙が置かれ、チョークで服地にラインが引かれていきます。チェックやストライプなどの地の目を合わせるのも、このときに行われる大切な作業です。

仮縫い、イギリス3回、日本1回でドンピシャ
表地に最適な芯地(主毛芯、増芯など)、裏地(胴裏、袖裏、スレーキなど)が選ばれます。本縫いの前にしつけ糸で洋服の各パーツが縫い合わされます。この段階でお客さんに着てもらいフィット感を確かめます。これが仮縫いです。イギリスでは仮縫いを三回もくりかえします。手を上げたり、いすに腰を掛けたり、生活のあらゆるシーンで洋服がうまくフィットしているかを確認します。
乗馬服の場合は店内においてある木馬に乗ってズボンの履き心地を確かめます。納品までに六ヶ月掛かるというサビルローテーラーらしい念の入れようです。
日本のテーラーは器用で一回でドンピシャリと合わせてしまいます。お客さんも忙しく仮縫いは一回で充分だと考えているようです。
洋服のセンスを左右するボタン位置はこのときに決められます。フィット感、シルエット、ボタン位置、衿巾などのを要望があれば、訂正がきく仮縫い時にいうべきでしょう。

縫製に上衣24時間、ズボン、チョッキ各8時間
主工程の本縫いです。高級な注文洋服はハンドメードが原則です。ハンドメイドといっても背や脇の直線縫いはミシンの方が綺麗なので、ミシンで縫います。袖付け、衿、ラペルなどのカーブの多いところは高度な技術を要求されるところです。ボタンホール、飾りステッチなどの人目に付くところは、ハンドで仕上げます。
着心地とシルエットの構成に大きく影響を与える芯造りに八刺しという大切な工程があります。これも手で刺した方が服地との馴染みが良いようです。
比較的、簡単な工程が多いズボン、チョッキを縫い上げるのにも、最低6年の歳月が必要とされています。背広、オーバーコート、礼服ともなれば、もっと高度な技術が要求されます。
かなりのスピードで縫っても、ズボン、チョッキでそれぞれ8時間ずつ計16時間掛かります。上衣は24時間を要します。
イギリスはもちろんのこと、日本でも洋服の職人さんはなりてが無く、高齢化が目立ちます。歳を取ると手が遅くなるので、縫製時間はさらに延びる傾向にあります。
注文洋服は自分の好みを入れ、身体にぴったり合った服を作るには最適のものですが、納期が長い(入念な縫製を望むなら最低1カ月は見ておく)のと,値段が高くなる(職人による一人縫いなら最低で18万円を覚悟しておく、銀座の一流店は30万円以上)のが欠点です。
一人で縫うため、腕の良い職人さんに当たると良い服が出来上がりますが、そうではないとなんとなく着心地に違和感あります。
これまではカスタムオーダー、ビスポークなどと呼ばれていたが、最近になって色々と出てきたオーダーと区別するために「フルオーダー」とも呼ばれています。

安く、早く、客層拡大を目標に 《イージーオーダー

昭和24年に花菱が先駆ける
文字通り安くて簡単に誂えることの出来るオーダー。いまから数十年前の昭和24年(1949年)に花菱が他社に先駆けて発表したものです。当時、洋服の技術者大勢いましたが、花菱は工場生産でコストダウンをはかり、納期を短縮した上でサラリーマンが容易に求められる価格で洋服を提供し、客層の拡大をはかることを目標に始めたものです。
同社の順調な業績に刺激され、多くの既製服メーカーが後に続きました。
既製服のサイズ、色・柄バラエティの不足を補完するためにイージーオーダーは最適のシステムだと考えられたからです。
既製服小売商は規模が小さく店舗面積は平均すると45平方メータ、15坪しかありません。このスケールでは200着も並べると店は超過密状態になります。
サイズのバラエティを整えると色柄が揃わず、色柄を揃えるとサイズの取り揃えを諦めなければなりません。立地条件の良いところに店舗を持たなければ売れないし、そのようなところは家賃が高いので、店のスケールを大きくできなかったのです。
もちろん今のようにワンフロアーに千着、二千着と品揃えをした郊外型量販店なども存在しませんでした。
品揃え不足でお客様を逃がせしてしてしまうこともしばしばありました。
イージーオーダーはこれらの客をキャッチしようとという意図のもとに始まったものです。

メジャー採寸か、着付採寸。常時15%のシェア
採寸方法には二通りあります。メジャーを使って体の各部の寸法を測るものと、着付採寸といって、ゲージ服を10〜15着用意して、その人のサイズに一番近いゲージ服を着せて、寸法の増減を割り出す方式です。
イージーオーダー専門の工場もありますが、既製服の工場で縫われることが多いようです。
あらかじめ工場で用意された型紙から、一番近いサイズ、体型のものを選び出し、採寸時に得た情報を元に修正を加えます。
最近ではコンピュータがこの作業を人に代わって行っています。
レーザー光線、ウオータージェットで、自動的に生地の裁断までやってのける新鋭機を備えた工場もあります。
既製服の補完として始められた歴史を持つだけに、値段は安く、既製服より一、二割ほど高い程度です。そのため若いサラリーマンには人気があり、、絶えず紳士服全需要の15パーセント程度のシェアを確保しております。昭和34、35年頃にデパートで1日に1500着も売った記録があります。
売値が抑えられているために、素材は国産品が中心ですが、シーズン遅れの輸入品が安く手に入れるようになってから、舶来品を使ったイージーオーダーもが増えてきました。

工場制生産の注文洋服  《システムオーダー

職人不足をカバーする苦肉の策
昔の注文洋服店は店舗と同じところか、近くに職場を持っていました。技術者は住み込みが原則でした。入店すると6年間ここで技術を学びます。教えてもらうというより先輩の仕事を横目で見て盗み取るのです。先輩のご機嫌を損ねると、尺でピシャリ、ひどくなると裁縫の道具が飛んできます。
6年間で年季が明け、そのあと無給の御礼奉公をして職人の仲間に入ることになります。
こんな苦労をして技術者になろうとする人はおらず、年々職人さんは減少しています。
技術者不足のあおりを食って、自前の職場を維持することが難しくなりました。年配の熟練技術者は下職として独立するケースも多く見られました。
縫製工賃が高くなると、注文服の需要が減少する、需要が少なくなると技術者が減る、技術者が減ると工賃が高くなる・・・という悪循環をたどって来ました。このままでは注文洋服は一部特権階級のものになってしまうという危機感が生み出したのが、システムオーダーです。

イージーオーダーの競争激化のとばっちりを受けて
イージーオーダーは裁断から裁縫まで、一切を工場側にゆだねるのに対し、システムオーダーは原則として裁断はテーラーで行い、本縫いだけを工場に依頼します。その店独自のシルエットを表現するためです。
システムオーダーが普及するにつれイージーオーダー業界が、この言葉を使い始めました。イージーオーダーは既製服より少し高い程度の安い価格設定になっているので、ある程度まとまった数量を売らないと商売になりません。
百貨店が大々的に売り出す、農協と提携して展示即売会を開く、石油スタンドに人集めを依頼して売り出しを企画するなどと、これまで洋服とは全然関係のない人まで動員してイージーオーダー服を売りまくった時期がありました。
販売競争激化にともなって安売り競争も激しくなりました。いち、きゅう、ぱー(19800円)といった安い値札を付けた商品も見受けられました。二着一緒に買うと安くなる「プラスワンセール」、洋服にワイシャツ、ネクタイなどのアクセサリーを付けての「セット販売」、夏には痛みやすいズボンをもう一着付けて売る「ツーパンツセール」などありとあらゆる販売促進策が実施されました。
量販の結果、イージーオーダーは既製服より縫製が悪いとの好ましくない評判も出てきました。既製服の場合、現反の投入から仕上がりまで、日程をくんで計画生産が可能ですが、イージーオーダーの場合、注文をもらってから1週間か10日で納品しなければなりません。一般的な傾向として安い服ほど納期が早くなります。しかも、シーズン直前かシーズンに入ってからでないと、即売会を企画してもお客さんは来てくれません。秋冬のシーズンに突入する9月の職場は大混乱に陥ります。無理をして縫い上げた服は悪評の原因を作ります。

テクノオーダーの名称でイメージアップ
注文洋服の技術者不足をカバーするために始められた「システムオーダー」の名称をイージーオーダーに使われて、イメージが高く保てなくなりました。
混乱を避け差別化を図るため、新しくを考え出されたのが「テクノオーダー」という言葉です。テクニックを駆使したオーダーというのが言葉の由来ですが、短くて、覚えやすく、響きが良いことから短期間に普及しました。
フランスでも同じような話があります。フランスの注文洋服は「スールメジュール」といわれています。メジュールはメジャーのことです。日本のシステムオーダーに当たるものは「デミメジュール」と名付けられていました。デミというのは半分の意味です。フランスのレストランで定食を頼むと、最後に小さいカップに入ったコーヒーが出ます。そのカップをデミカップといいます。半分しか寸法を採らないオーダーと思われ、イメージは良くありません。
イメージの一新を狙って付けられたのが「テクノメジュール」です。

工場生産でコストダウンをはかる
一口にテクノオーダーといっても洋服店によってやり方はまちまち。カスタムオーダーと同じやり方で、縫製だけを専門の縫製工場に依頼する方法が一つ。自店の特長をよく知ってもらった上で裁断まで工場側に任せてしまうケースも見られます。
採寸もメジャーによるもの、ゲージ服による着付採寸をとる店もあります。要は従来の熟練技術者の一人縫いではなく、工場製生産の職場で洋服を縫い上げるところに特長があります。洋服は多くの工程に分かれており、技術的な難易度も箇所によって違ってきます。例えばポケットの下ごしらえなど熟練技術者でなくても出来ます。
これを一人で総てをこなすにはかなりの無駄があります。その無駄がコストの高騰を招きます。
一例ですが熟練者、中習者、初心者がチームを作り、自分の技術に応じた箇所を担当して一着の服を縫い上げるのです。3人、4人でチームが構成されます。業界では、ブロックシステムと呼んでいます。
洋服のコストの中で一番大きなウエートを占める縫製工賃が大幅に減少します。縫製品質のばらつきも無くなります。
お客様に安くて品質の優れた洋服を提供できる道が再び開けたのです。

ファッション先行の新システム 《パターンオーダー

デザイナーブランドの販売促進にも採用される
パターンオーダーは一番新しくできた洋服仕立ての形態だけに、色々な解釈の仕方があります。ファッション性が前面に出ているのが特長です。シーズンに先駆けてシルエット、デザインなどを決めて、スケッチによる絵姿や写真でお客さまにファション情報として伝えられるようになっております。
デザインポリシーに従って服地が取り揃えられます。デザイナーブランドの服地の販売促進策として考え出されたのが、広がったものです。服地の選択は横15センチ、縦10センチぐらいに切ったものを厚紙に張り付けたパターンシートを利用します。
採寸はゲージ服による着付採寸を採用してるところが多いようですが、仮縫い付きを望むお客様の要望を入れて、仮縫いを付けて、限りなくカスタムメードに近づけようとしているケースも見られます。
ファッション志向の強い若いビジネスマンにとってはオーダー服はダサイ存在で、お呼びではなかったようですが、パターンオーダーはこのような客層の開拓には威力を発揮しました。
ファッション性が高いといっても、あまりにも個性的な服は敬遠されてしまます。
ベーシックスタイルとしてイギリス調のオーソドックスな商品、コンチネンタルの名でファッションセンスの優れたイタリアの香がする洋服、ナチュラルの名のもとに気安さを誇るアメリカ調といったように、絞り込みで、商品の特長を際だてながら、スタイル面では枠を広げるという高等戦略も見られるにまで成長しました。



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