パンツ(Pants)

パンタールーンズが短縮されてパンツ

フランス語のパンタロンにあたる米語のパンタールーンズ(Pantaloons)が短brief
縮されたものがパンツ(Pants)だといわれています。アメリカでは男女、年令に関係なく、あらゆる用途に使用する長ズボンのことを指す言葉として使われています。
ところが日本では男女の下着を「パンツ」と呼んできました。そのためか「パンツ」には何となく艶めかしい響きがあり、人前でこの語を口にするのは恥ずかしい思いがします。若い人はアメリカ人と同じように「パンツ=ズボン」と理解していますので、こんな感情は持っていないでしょう。
カジュアルウェアに関してはアメリカがヨーロッパ諸国より先行しています。
言葉の面でもアメリカで普及したものが、イギリスに逆輸入され、年輩者と若者の間にどうも温度差が出来ているようです。
下半身に付けるものは何時の時代でも、下着が外着になったり、その逆があったりと混乱をもたらせているようです。

スキャンティーズから失禁パンツまで

パンツに関係のある外国語に目を通してみましょう。
トラウザース(Trousers=英=ジャケットと対になったズボン)、ドロワーズ(Drawers=仏=日本ではなまってズロース)、パンタロン(Pantalon=仏=長ズボン)、パンタルーン(Pantaloons=米=パンタロンと同じ)、ジュポン(Jupon=仏=ペティコート、ズボンはここからきたとも云われている)、スラックス(Slacks)、パンツ(Pants=米=パンタルーンの短縮型)、パンティーズ(panties=米=女子用の短い下着)、スキャンティーズ(Scanties=米=僅かな布で大切なところを覆うもの)、ショートパンツ(Short-運動用)、バーミューダパンツ(Bermuda-膝上までの半ズボン)、ボクサーパンツ(Boxer-拳闘用)、スエートパンツ(Swet-トレパン)、アンダーパンツ(Under-ズボン下)などなど。
いちいち上げているときりがないので、これくらいにしておきますが、紳士の目を楽しませてくれるホットパンツから、少子高齢化の時代風潮をバックに脚光を浴びてきた失禁パンツまで、世の中にはいろいろなパンツがあるものです。

男はブリーフ派(Briefs)とトランクス派(Trunks)

さて、現在日本の男性が身につけている下着(パンツ)は大別すると、ブリーフ(Briefs)とトランクス(Trunks)の2種類に別れます。
英語での表現は語尾にSが付き、必ず複数形を取っていることに注目下さい。足が左右2本あるからです。眼鏡もグラーシス、鋏をシザースと複数表現とするのは、レンズが2つあって初めて眼鏡といえるからです。
鋏も刃が2枚なければ使い物になりません。日本語は複数という観念を持たないばかりか、Sを付けると発音がしにくいし、面倒でもあると、パンティ、ブリーフと単数表現を取ることが多いようです。
ついでに複・単の誤解を紹介しておくと、ジャケットの裾に動きやすいようにと入れるスリットを正式には、ベント(Vent=馬乗り)と呼んでいますが、日本では1つの切り込みしかない時も「センターベンツ」と複数で呼んでいます。正しくは「センターベント」と単数の表現をとります。これに対してサイドを切ったものは右と左にベントがあるので、ベンツが正解となります。要するに、日本語は発音のしにくい物はお断りと、好きな方を選んでいるようです。

ブリーフ=簡単な、パンツ=ハアハアいう

ブリーフを英語の辞書で引くと、「僅か」、「簡単な」という意味を持っていることが判ります。僅かな布で簡単に出来上がるのがブリーフなのでしょうか。他に何を要請するのか要請書、何をせよというのか命令書、頑張ってこいよと戦闘機乗組員に与えられる命令書などの意味もあります。サラリーマンが好んで持つ書類鞄をブリーフケースといいます。書類が何故パンツになったのかは、今後、研究を要する大問題です。パソコンのデスクトップにもブリーフケースというホルダーがあります。パンツ入れではなく、ファイルを一時的に入れておくところです。
ついでにパンツを単数形(Pant)で引いてみました。「夢を見る」が原義で、あえぎ、あえぐ、息切れ、ハアハアいう、動悸、熱望する、など暗示的な言葉が見つかりました。
ブリーフとトランクス、どちらがセクシーかというとうブリーフに旗が揚がります。お尻の線がくっきり表現できるし、前のこんもり、もっこりは性器の存在を誇示しているかのように見えます。

ブリーフ。セクシーな表現に柄は要らない?

白無地は定番中の定番、一般的で無難なのはグレー、個性的な黒、少数派のその他の色物などありますが、柄物はほとんど見掛けません。せいぜいゴムの部分にメーカーのロゴが入っているくらいです。セクシーな表現には柄など必要がないというのでしょうか。
もちろん最近では下着に精神的な子供帰りを求める人もおり、密かにイラストなどを入れて楽しんでいる向きもあるようです。素材としては伸び縮みするメリヤスが多く使われているようです。
ちなみに女性にトランクスとブリーフのどちらが好ましいか聞いた調査ではブリーフに人気が集まったといいます。

大物も小物も包み隠すトランクス

トランクス(Trunks)というのは男子用の短いパンツのことです。もともとスポーツ用として使われていたもので、ボクシングトランクス、水泳用のパンツがその代表選手です。トランク(Trunk)を英語の辞書で見ると、
「幹」「胴」「本体」「主要部」とあるが、何となく大切なものというニュアンスはが伝わってきます。他に車の後部に付いている物入れもトランクといいます。大型の物入れのことですが、大物も、小物も包み隠してくれます。
素材としては布帛が多く使われます。ブリーフの無地もの主体に対して、トランクスは色、柄のバラエティに富んでおり、遊び心を満たしてくれます。最近、伸縮性に富んだニット素材を用いたトランクスが好調に売れているようで、まだまだ色柄・素材共にバラエティが増え、トランクスそのものが隠れた存在から、見せる衣服へと変貌していくものと考えられます。
ブリーフのように身にピッタリ合っているのではなく、性器の存在も曖昧に判る程度で、少しゆとりを持たせた設計になっいるためか、見られた時の恥ずかしさはブリーフに比べるとうんと少なくなります。

英国では「パンツ」は下着、米国はズボン

英国では下着のことをパンツと呼び、ズボンはトラウザースという別の言葉をもっています。日本でも同様にパンツは下着のことで、フランス語のペティコートを意味するデュポンがなまって出来たといわれる和製語です。
「ズボン」が、トラウザースと発音しにくい言葉に取って代わって、すっかり定着してしまいました。
ところが、服装のカジュアル化、略装化の面で一歩先を行くアメリカでは、ズボンのことをパンタルーンズ(Pantaloons)の省略語を採用して「パンツ」と呼んでいます。短く、語の響きも軽快なことからスラックスという言葉も出し抜いてしまいました。
ジーパン、ホットパンツなら格好が付きますが、ジースラックス、ホットスラックスでは何となく「おじん」臭くなってしまいます。短くて、インパクトがあり、語の響きの良い言葉はすぐに若者の口コミによって世界に広がっていきます。

「Pants」カジュアル王国・米より逆輸入

コンピュータの世界でも米国語が世界をリードしていますが、ファッションの世界でも「パンツ」という言葉が英国に逆輸入され、混乱を引き起こしました。国境をバリアーと考えない若手は、すんなり受け入れましたが、中高年はただでさえキングスイングリッシュに比べて、アメリカンはルーズで品が良くないと、快く思っていない層からは可成り抵抗がありました。日本も同様で若者と年輩者ではパンツに対する理解に温度差がみられます。
インターネットを初めとするマルチメディアの発達した今日では、若者にとっては国境とか地域、文化などのバリアーは殆どありません。恰好の良いものは瞬く内に模倣され、響きの良い言葉その日の内に会話の中に取り入れられます。
地域性を何よりも大切にする年輩者は、マクドナルドが普及させた立ち食いの習慣、ズボンをパンツといいかえることには抵抗を示します。

白木屋の火事が「下着見直し」のきっかけに

パンツに人々の注視を集めたのが、昭和7年(1932年)に起こった白木屋の火事でした。東急百貨店の前身だった同店が火災を起こしたときも、火事は江戸の花と心得る野次馬がたくさん集まりました。和服を着た店員は当時の習わしにより、下半身は腰巻きだけ。下から見れば大切のところが丸見えになります。
和服の裾を押さえようとして墜落死したり、そんな恥ずかしい目に遭うのなら死んだ方がましという慎み深い女性もいて、死傷者の数が増えました。これがきっけとなり女性が和服の下にもパンツをはくようになりました。
時代背景がそうさせたのであって、ヘアーヌードがまかり通る現在なら「見られるのは一時の恥。命には代えられない」と、死傷者はもっと少なくなっていたかも知れません。



パンティ学入門〜語源学・仮入門
http://www.toyama-cmt.ac.jp/~kanagawa/gogen.html


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