礼服の歴史をひもといてみると、動きやすいように余分なところ切り取り、省
略化が行われていることが判ります。
このスペンサージャケットも燕尾服をウエストラインからすっぱり切り落としたものが、原型となっています。
スペンサーという名前はイギリスのジョージ・ジョン・スペンサー伯爵からきています。伯爵が燕尾服のテールを焚火で焦がしたとか、落馬してテールの部分を切ってしまった。という2つの説がありますが、どちらも伯爵の不名誉な失態をネタにしたもので、そのまま信用するのは当主に対して失礼かと思います。
名前からしてもスペンサーが本家であることは間違いありません。
「お洒落なスペンサー伯が考案した、カジュアルな雰囲気を持つ丈の短い礼服」というのでは面白くないので、「火で焼いた」とか、「落馬した」というストーリーを後から作ったのかも知れません。
フロックコートの前の部分を斜めに裁ち落としたものをカッタウエイコートといいます。モーニングコートの原型がこれです。同じようにフロックコートをヒップラインの下で真横にカットしたものが、現在ビジネスマンに着用されているダブルブレストのジャケットにデザインのポリシーが引き継がれています。
スペンサーコートのテザインを見ると、燕尾服のウエストラインからすっぱり切り落としたもののように思えます。
燕尾服はダブルブレストのようなボタン配置になっていますが、このボタンは掛けられることがありません。左右の前身頃は重なるようにはなっておりません。
スペンサージャケットには左右に3つずつ計6個のボタンが付いているのは燕尾服と同様です。しかし、こちらの方は身頃が完全に重なるダブルブレストです。片側の3つのボタンはボタンホールに掛けられるようになっています。
スペンサージャケットは1790年の終わりごろに現れ、19世紀に入ってから上流階級の男女の間で大流行しました。初期のものは毛皮で縁取りをされたものもや、ノースリーブのものもあったといいます。このことから判断しても、かなりカジュアルな感覚の服だったと想像されます。
この服の寿命もは意外に短く、1850年代には廃ってしまいました。スペンサーという名前はジョージ・ジョン・スペンサー伯爵(1782年〜1845年)から来ています。スペンサージャケットの由来を説明する時に、スペンサー伯爵にまつわる失敗談が紹介されます。
ある日スペンサー伯爵は自分の猟場でハンティングを楽しんでいました。すこし寒くなったのでまわりの落ち葉を集めて焚火をしました。後ろ向きで暖をとっているとき、うかつにも、燕尾服のテール部分を焼いてしまいました。スペンサージャケットはこのようにして生まれたというのです。
もう一つの説はスペンサー伯爵が乗馬を楽しんでいたとき、誤って落馬しました。燕尾服のテール部分が何かに引っ掛かりちぎれてしまいました。これがスペンサージャケット誕生の正しい由来である、とするものです。スペンサー家は1522年誕生のサー・ジョン・スペンサーの血を引く名家で、ジャケットの名前に使われた当のご本人は、3代スペンサー伯ジョン・チャールズ(1782-1845)です。
英国の貴族は平時にはカントリーハウスで狩猟やスポーツをのんびり楽しんでいるように見えますが、有事に際しては真っ先に戦場に駆けつける義務があります。従って馬術は何よりも大切なものとされています。
落馬で洋服の裾をちぎってしまったという話はスペンサー伯でなくとも、上流の英国人にとっては不愉快なことでしょう。
二説ともスペンサー伯爵の失態によりスペンサージャケットが生まれたとしています。
伯爵にとっては自分の名を残してくれるのは嬉しいが、何時までも失敗談を持ち出されては面白くないでしょう。燕尾服が夜の正礼装として最高の地位を得ている事実をしっいる現代人にとっては、これを着て馬に乗るとは想像しにくい事ですが、燕尾服もモーニングコートも当初はゴルフ、ハンティング、乗馬などのスポーツを楽しむための服でした。洋服の後ろ裾が二つに分かれているのは、乗馬をしやすくするアイデアだったのです。
したがって、焚き火で焼いたり、落馬でちぎれたりする事もあるかも知れません。どちらかの一説が現代まで伝えられているのなら、その信憑性はかなり高いと言えますが、二説が絶えず並行して出てくるのは、話を面白くするための手段とも考えられます。
そこで想像力をたくましくしてスペンサージャケットが誕生したエピソードを書き直してみましょう。
洋服通で粋人であったスペンサー伯爵は猟場で焚火をして暖をとっているときに、乗馬服のテール部門を何時か焼いてしまうのではないかと、不安に思っていました。また、乗馬の時洋服のテール部分があちこちに引っ掛かり、邪魔になるの大変気にしていました。
「着易くしかも機能性に富んだ洋服でしかも格調の高いもの」を前提に一番格調の高い洋服である燕尾服をデザインソースとして、邪魔になるテール部分を切り取ったジャケットを新しく考案しました。お抱えのテーラーに燕尾服のウエストラインで水平に切り落とし、フロントをダブルブレストにするという大胆な改造アイデアを伝え、製品化してもらいました。常々テール部分を邪魔っけに思っていた人が多く、瞬くのうちに上流社会の男女に着られるようになりました。考案者の名を取ってスペンサージャケットとしました。
スペンサージャケットはある時期完全に姿を消してしまいました。
一旦廃ってしまった洋服が再び流行の第一線に躍り出たのは、フランスの有名オートクチュール・デザイナーであるイヴ・サンローランが、1968年にビロード製のスペンサージャケットを発表したのに端を発します。礼服というよりもパーティーウェアという方がこの洋服の性格をよくあらわしています。ジャケットの色も好みによって、自由に変えられます。ズボンはタキシード用の側章が1本入ったものを合わせ、エナメルシューズを履きます。ヤングマンの集い、結婚式場などではよく見かけます。
なお、単にスペンサーというと下着として用いる丈の短いセーターのことをさします。スペンサー伯爵の頭髪が薄かったのかどうか知りませんが、18世紀に被られた「かつら」もスペンサーといいます。
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世界帝王事典(スペンサー家)
http://village.infoweb.ne.jp/~isamun/monarchs/index.html
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