派手な色使い、大きいチェック、スカートをはいたスコットランドの兵隊さん・・・
様々なイメージで記憶に残っているタータンチェックは、もともとスコットランドの氏族を現すための飾章、紋章として儀礼、狩猟、戦争などの非日常的なシーンに主として用いられたものです。
そのために日本の「家紋」と比較されます。一つ違うのは「家紋」は分家しても本家が使っていたものを用いますが、タータンチェックの場合は分家用の新しいパターンを持つことが習慣となっています。
分家が増える度に新しい柄が一つ増えます。
今日ではクランタータンが171種類、ドレスタータンは600種類とバラエティに富んでいます。
スコットランド人の悲しみと喜び、愛と憎しみ、戦争と平和、民族対立と和解などの歴史が一本一本の糸に織り込まれています。
古代ローマの初期にもタータンチェックに似た色糸を使ったチェック柄の毛織物があったといわれています。
スコットランドのタータンと直接関係のあるものに限りますと、その起源は13世紀頃というのが定説になっているようです。
タータンという言葉は古いフランス語で「麻と毛の交織織物」という意味を持つテリターナ(Teritana)が訛ったものという説があります。タータンはスコットランド氏族の婦女子によって創作されたもので、現在のようにこの柄はゴードン家のもの、スチュワード家はこの柄、といった決まりはありませんでした。それぞれの地域で特長のある柄が作られ、自然のなりゆきとして、その土地に住む氏族固有の柄が決まってしまいました。
タータンは染料に自生する植物を利用していたため、戦場では保護色の役割を果たし、敵から身を守ってくれました。また、これとは反対に独特の柄行は敵と味方を見分けるのにも役立ちました。
1550年にはすでに「タータン」という言葉が使われていました。
戦時から平時、衣服から帽子へと用途を広げ、クランタータン、ハンティングタータン、ドレスタータン、ロイヤルタータン、レジメンタルタータン、ディストリクトタータンと種類が増えてきました。民族衣装的な役割を果たすことも多くなりました。
柄や色の用い方にもルールができてきました。日本の家紋と違ってタータンは分家が出来ると新たな柄を用いることになっています。16世紀にはすでにかなりの数のクランターンが存在していたといわれています。タータンの発祥の地といわれているハイランド地方は緯度が高く、イングランドと比べると、冬には厳しい寒さに見舞われます。湿度が高く、寒冷な気候から身を守るためにワークウェア、ベッドリネンとして用いられていたタータンは、18世紀に絶える間もなく起こった戦争に際して、敵味方を識別するために、各氏族が固有のパターンを保持するようになりました。
1746年4月16日にカンバーランド郷(Cumberland)が率いるスコットランド軍が、宿敵イングランド軍を破りました。戦勝を祝って各氏族がタータンのキルトを身につけたのが、クランタータンが実質的なデビューとされています。
タータンの研究者であり『民族衣装』の著者として知られているオーギュスト・ラシネは色彩や図柄は氏族によって決まっていますが、身分によって色の使い方が厳しく定められていることを、長年研究の結果突き止めました。
農民、兵士は1色、将校2色、氏族の頭は3色、貴族は4〜5色、すぐれた哲人は5色、王族が7色になっているそうです。位が上になるほど色数が増え、見栄えのするタータンを身に着けることが出来るということですが、多色使いの手の込んだ織物はコストが上昇しますので、お金に余裕のある名士でなければ着られないことになります。
現在ではタータンチェックはファッションの一環として、色を柄ともに何の制限もなく、自分の好きなものを自由に着用できますが、スコットランド人のタータンチェックに対する思い入れは、一般とは違ったものがあります。
日本の和服が冠婚葬祭用に特化したように、平常時にはスコットランドの人がタータンを身に着ける機会は少なくなっています。彼らがキルトを身に着けるのは、非日常的な行事が行われるときのみに限られております。祝賀会、結婚式、舞踏会、パーティー、教会のミサ等々です。キルトというのはスコットランドの男子が着用するヒダの付いた巻きスカートで、生地にはもちろんタータンチェックが用いられています。
たくさんの人がキルトを着ている姿を見たいのなら、ハイランド祭りの時期にスコットランドを訪れることでしょう。ロンドンの風物詩として知られるバッキンガム宮殿の衛兵交代でも見られますが。
ロンドンでタータンを買うなら「スコッチハウス」が一押しといえます。同社はスコットランドのグラスゴーからきたガーディナー兄弟が店開きしたものです。
1834年に兄弟は長年住み慣れたグラスゴーを後にし、ロンドンにやってきました。初めの内はテーラードの分野で活躍していましたが、1839年に故郷・スコットランドの特産品であるスコッチツィードとタータンを販売する店をロンドンのイーストエンドに開設し、その名を『スコッチハウス』としました。
わかり易い単純な店名と特色のある品揃えが、ロンドン子の心をとらえ大繁盛しました。19世紀の後半になってナイッブリッジに新店舗を開き、取り扱い商品の幅も広げました。
現在のスコッチハウスはロンドンの名所となっており、店は観光客でにぎわっています。
同社のタータンは『カレンチェック』と呼ばれるもので、伝統をベースに新しくデザインされたチェックです。
もし、スコットランドまで足を延ばせるなら、エジンバラにある「ジェンナーズ」という百貨店を訪ねてみてください。ここは世界で一番古い百貨店といわれいます。外観を見ると歴史の古さが判ります。
一階の売り場はタータンチェックであふれています。マフラー、帽子から、正式の男性用民族衣装・スカートとジャケットで構成されたキルトまで、リーゾナブルな価格で求めることができます。
Tartans of Scotland(英文)
http://www.tartans.scotland.net/
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