”ダンディ川口”の「投球論」



少し前になるが、NHKの夜の「趣味悠々」という番組の中で”パスタ”を自分で打つのを体験しようというのをやっていた。
番組でよくしゃべるイタリア女性の先生の指導の下、初めてパスタ打ちに挑戦していたのが、 この”ダンディ川口”さんである。

やはりいつものように”黒”のセーターを着て、パスタをこねていらした。

先生がイタリア人なので、日本語があまり達者でない分だけ、「コツ」を教わるのではなく、聞き出さないとうまくいかない。
しかしそこは、負けん気の強いピッチャー、ドンドン質問して、「コツ」をつかみ、額にうっすら汗を浮かべながら、パスタを打っていた。

まさに、”パスタ=スパゲッティ”を打つのも、日本そばを打つのと同じように「コツ」がいる。
先生のイタリア女性は、陽気な方で15分間ほど、こねてから待つ時間があるのだが、 カンツォーネなど大声で歌っていた。
あきれるよりも先に、その陽気な先生に真っ向勝負して「コツ」をつかんでいく 姿に最近読んだ、彼の本のことを思い出し、「やっぱし頭いいのね。この人。」と思った。 その読んだ本が、「投球論」(講談社現代新書)である。

”ダンディ川口”さんとは、勝手に我が家で呼んでいるだけである。世間では川口投手である。

本名川口和久さん。1959年鳥取生まれ。1981年ドラフト1位で広島入り。 常勝赤ヘル軍団のサウスポーとして、広島東洋カープの優勝に貢献した。 その後、94年にFAとなって読売ジャイアンツに移籍。 98年に引退。

87年、89年、91年に奪三振王。18年通算139勝135敗。

引退してからはTBSの解説者として現在も活躍されているのであるが、 なぜか?その日は、NHKでイタリア女性の先生にビシビシときつーーい指導を受けながら パスタ打ちに初挑戦していた。

この人が、TBSのスポーツ番組で解説をしているのを初めて見た時、 ダブルの”黒”っぽいスーツを着て、スラリとしたそのスタイルと顔。 カッコイイなぁーと思った。

”ダンディとはこういう感じ、雰囲気を言うのだ!”と一瞬にして思った。

それから、我が家では、川口投手のことを”ダンディ川口”と呼んでいるのである。

広島時代の先発投手から、巨人でリリーフとなって、なんと! あの忘れもしない「96年10月6日ナゴヤ球場」での中日戦で勝ち、優勝投手となったのだ。 あの試合は、もちろん見ていたが、この川口投手が最後の抑えのピッチャーだったということを この本を読むまで知らなかった。いわゆるひとつのメークドラマの完成の瞬間である。

その試合は、中日、巨人、両チームとも「非常に気合の入った」、優勝がかかった大一番だった。

この時のマウンドでのプレッシャーについて、若くして亡くなった広島の「炎のストッパー」 の津田投手の言葉を思い出したと書いている。
津田投手は、山口県の南陽工業の出身である。 実はわたしの母校である愛知県の県立高校が春の甲子園に初出場のときに1回戦で当たって当然のことながら負けたときの南陽のエースだった。 だから、津田投手のことはその後も広島での活躍もよく覚えている。

この本は、野球のそんなに熱狂的なファンでないわたしもたいへん面白く読んだ。

目次より、
●投手とは何か
 タテの投手とヨコの投手
 本線のボールと枝葉のボール
●右の強打者、左の強打者
 落合博満との対決
 高橋由伸をどう抑えるか
●先発とリリーフ
 メークドラマの真実
●巨人と広島=両極端のプロ野球チーム
●無礼なピッチャーとして

この本は、ピッチャーとは何か? ピッチャーが何を考えて投げているのかが実に、よくわかる本である。
どんなことを考えながら、どういう組立てで、投球をするかが。また、達川とのバッテリーの話も面白い。

あとがきに、
無駄球の多い、コントロールの悪い投手の話にここまでつきあっていただき、 ありがとうございました。とお礼を述べた後、

「記録より記憶に残る選手」とよく言います。
ボクもそうありたいと願ってきました。
「三振をよく取ったサウスポー」として、記憶に残ることこそが、投手として最高のしあわせだと 思っています。

と書かれている。

そうだ!「その志こそが、プロのピッチャーに必要なんだ!」と感心した。

今年は、この本を片手にビール飲みながら野球をTVでみよう。 とくに、イチロー、高橋、松井がバッターボックスに立ったとき、相手のピッチャーの配球に 非常に興味が湧く。
「駄目だよー。そこで、インハイにストレートをバーンと行かなきゃぁ〜」な〜んて、知ったかぶりしながら。

う〜ん、今年はこれでプロ野球を面白く見ることができるな。きっと。うん。