モルトマスターって、なぁーに?



同窓会の時に20年ぶりに再会した1年後輩の堀内くんと新宿で痛飲する機会を得た。
今度、新宿でいっしょに飲もうとの約束を半年ぶりに果たしたという訳である。

実は、6月頃に飲もうか?とメールでやり取りしていたが、 ちょうどそのころにわたしが何回も名古屋に帰らなくてはならなくなり、 また、そのまま長い夏休みも名古屋にいたので今回が「仕切り直し」となって久しぶりに会えたのである。

学生時代にわたしは、この堀内くんの川崎の自宅に1度ならず、何度か遊びに呼んで頂き、 お父様お母様とも親しくお話させて頂いていた。

お決まりの新宿西口交番の前で待ち合わせをした。 ケータイ持ってるから待ち合わせはどんなメジャーな場所でも OKである。

渋谷のハチ公前でも、こりゃ待ち合わせできるなー。昔からハチ公前は待ち合わせした2人が両方とも同じ時間に居たのに会えないことがたびたびある「すれ違いのメッカ」ですからね。

目指すバーへ行く前にまず食事をということで牛タンの「ねぎし」に入った。

昔、昔、歌舞伎町の西武新宿駅のそばに小さなお店「牛タンのねぎし」があり、いつも行列ができていた。
その後、多店舗展開を開始し、新宿だけでも4店か5店の店がある。 新宿に勤務していた時には、特に昼の牛タンの定食「ねぎし定食」をよく食べた。

その日入った「ねぎし」は、あまり夜飲むところでないのか? 酒の肴は少なかった。いつも行く「西新宿店」?は、大皿料理もあり 夜の飲み客を意識していてグットなのだが、きょうは2軒目に行く予定のバーからあまり離れたくなかった。
牛タンと他の物を頼んでビールを中ジョッキ3つ飲んで目的のバーへ出かけた。

20年ぶりに同窓会で飲んだ彼は「モルトマスター」の称号を持っていると言っていた。

ふーん、その「モルトマスター」ってなぁーに?!なーんか偉そうな感じじゃんかよー!
「マイスター」とは違うんだよねぇ。あ・・!、あれはドイツか。などと与太を飛ばしながら話を聞いた。

彼の説明によりますと正式名称は忘れたがモルトウイスキーを普及することを目的としたスコッチウイスキー協会日本支部?が、ワインでいう「ソムリエ」にあたる「モルトマスター」なる人たちを 世に送りだして「モルトウイスキー」の普及を促進しようと考え出し、授けた称号ということである。

なんでも、120種類のモルトウイスキーを飲み、その後に筆記試験をして 晴れて与えられるものなんだそうである。

「すっげーじゃんかー!」

「いえ、全然すごくないです。30人いかないところでこの制度はなくなりました。 確か28人だったかな?わたしは2番目に取ったんですけど。 協会の方がどうも熱が冷めちゃったらしくって・・・」

「ふーん、じゃ逆に今から取りたくっても取れないじゃんか!。希少価値ってやつだな。それは」



新宿西口で2軒「バー」に行った。

実は、モルトマスター氏も初めて行くバーで、 ただそこのオーナーのことを存じあげているということであった。

生まれて初めて「モルトウイスキー」を主力で飲むバーに入ったのである。
もともとウイスキーをストレートで飲むという習慣がないところに もってきて「ブレンドしていない」ウイスキーである。
さらにそこは新宿なのに物音一つしないバーであった。

ちょっといつも行くとことは違うかなぁ。
しかし、こんな新宿西口という場所でこんな種類の酒を飲みにくる客がそんなにいるとも思えない。 オープンして1年経つとのことであった。

バーテンダーさんといろいろな酒蔵の話などするのを聞いていると、モルトマスター氏はさすがに詳しい。

わたしはモルトウイスキーの銘柄を知らないので、前から気になっていた「カルバドス」という酒を飲んでみた。 これは、スペインの無敵艦隊が大英帝国海軍に敗れてフランスのノルマンディ地方に流れ着き かの地で造ったというりんごを原料としたブランデーである。・・・とそこのバーテンダーさんは解説してくれた。

モルトマスター氏が注文した酒も「せっかくですから」とすすめられるままに、全部一口ずつ味見をした。

しかし、慣れていないわたしは、飲む前に鼻に「グッと」くる香りからなぜか?わからないが「アスピリン」という単語を連想してしまった。

申し訳無い。うまさがわからない。

ただ、「この炭の香りが、たまんないんですよねー」というモルトマスター氏の感想を聞くと 鼻の奥に残った感じは「アスピリン」から「スモーク」という単語に変わった。確かに炭の感覚が残る。

わたしが、2つ。モルトマスター氏が3つ飲んでその店を出た。

「いやー、深谷さん、肩凝っちゃいましたねー」
「あれ?モルトウィスキーを飲ませるバーってみんなあんな感じじゃないの?」
「違いますよー。ちょっと最初に本を見て来ましたって言ったからお店の人も構えちゃったんでしょうね。お通夜みたいでしたね」
「なんだよぉー。そっかー!。そうならそうと早く言ってくんなきゃー!!すぐ出ようって。ビビらせんなよなー。ギャハハハァー!!」



2軒目に行った店も同じオーナーのお店であった。今度は女性の店長さんのお店です。
なかなか知識も豊富で感じも良かった。ここはオープンして7年目とのことである。店の名前は「カシミール」。

ここは、わたしなどが好んで入るタイプのバーであった。暗い照明とボックス中心であるので、 団体客が流れてきても「OKですよ」の気楽な感じがした。

新宿に勤務していたときには全然気がつかなかったですよー。こんなところに店があるなんてねー。
ここでは、わたしはカクテルにした。マティーニ1つとジン・リッキーを2つ。

前回の同窓会の時にモルトマスター氏から土屋守氏の話を聞いた。 わたしはそれまで、土屋守氏のことを全く存知あげなかった。 その後に気をつけて見ているといたるところにこの方の書いたものが出ている。 ワイン界における田崎真也氏と同じポジショニングの方である。ウイスキー界というものがあるとすれば、ですね。
現在わたしの持っている「98年版世界の名酒辞典」の巻頭のカラーの「アイルランド酒紀行」という文も写真も土屋守氏のものであった。

モルトマスター堀内氏は、この土屋守氏の主催するイギリス・アイルランドの ウイスキーツアー(イギリスの酒の蔵元を回るツアー)になんと3年連続参加したというのだ!そんでもって、その土屋氏とも飲んだりしているそうである。

これを聞いて、ほんとにウイスキー博士になったんだなぁーと感心した。
また、その夜話をして思った。ウイスキーだけじゃなく、すべての洋酒に詳しい。マイッタなぁ。

おいおい、学生時代そんなに酒飲みだったかなぁー?堀内くん。 やっぱわたしが下宿生であなたは自宅から通学だったからねー、いっしょにべろべろまで飲んだ記憶ないもんなぁ。

聞けばなんでも赤坂の「とあるバー」でこのツアー仲間のモルトマスターたちが夜な夜な集まってモルトウイスキーを飲んでいるのだそうである。チョット恐いなぁー。

「こんど深谷さんもぜひ。深谷さんぐらいお酒好きならば話あいますから」
「うーん、でも、モルトウイスキーをうまいと思わない訳だからやっぱわたしはみなさんのお話についていけませんよ。 でもねぇー、その赤坂の極端に”マニアックな酒飲みの集まるバー”にはとっても興味があるなぁー」
「じゃー、行きましょー!!」
「よっしゃぁー!ぜひ、連れてってチョー!次回は、赤坂のそのバーで飲もうぜぃ」

その時にはもちろん「モルトウイスキー」飲んでお付き合いしますよ。
今回で「アスピリン」から「炭の香り」に鼻の奥のスイッチ切り替え完了しましたから。

おっと一つだけ忘れないようにしなきゃなぁー。
モルトマスターは「花の独身貴族」だから使えるお金の金額がぼくちんよりずーと多いってことを。

最終電車に揺られながら鼻の奥に残った「炭の香り」にもう一度酔った。