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銭湯を経営されていた大家さんはその昔、そのあたり一体の土地を全部持っていた方、つまり大地主であったそうであります。 バブルがはじける前のことです。 古い銭湯を壊して新装オープンするに当たって、 近代的な銭湯に変貌させる計画が立案されました。 小さいながらも7種類の風呂を持つ「近代的な銭湯」。スチームサウナ完備。
おまけに銭湯自体をビルにして一階から二階をぶち抜きの風呂場として使用、
3階から6階までを賃貸住宅として貸し出したのであります。いかにもバブル期に銀行が提案しそうな資産運用方法です。
オープンしてみますと大家さんの狙いは見事に当たり、夏でも冬でも銭湯の前と後ろの広い駐車場がいつもいっぱいで大盛況の風呂屋となりました。 さらにここがなかなかアイデアが良かったのですが、 この銭湯の正面入り口前には、設楽焼き窯元に直接発注依頼したという「かさと徳利」を提げた 「狸の巨大な置物」が設置されていました。 身の丈5メートルは優にある、巨大な置物であります。 その巨大な置物が目印ということで、「たぬき湯」とわたしは勝手に命名しておりました。ススキノからのタクシーにも 「あぁ・・、あの狸の置物のある風呂屋ですね!」と認知され、そんなに時間もかからずに一般にも広く知られたのでありました。 風呂屋というところは、人種のるつぼ、玉石混合、様々な人が出入りする場所であります。 ですから、たいていのことがあってもビックリしません。 しかし、ある日奇怪なことが起こりました。
その日も朝、エレベーターでいつものように8:20に1階へ降りていきました。 そのエレベーターは両側に開く扉部分に窓がついおり、降りていく各階の様子が見られるようになっています。 朝の爽やかな空気の中、エレベーターの扉に向かって立っていたわたしは、 見るともなしに各階の様子をその窓から見ながら下っていったのでした。 ・・・5階・・・4階・・・。すると・・・。
ちょうどマンション居住階層部分の途中、4階を通過する時に、 まさかなぁー思うものが4階から5階へ登る階段の真ん中に置いてあるのが見えたような気がしました。 それは、エレベーターの中からでもはっきりと見える位置、 つまり階段の真中にまさにウ●コとはこういう形状を言うのだ!と言わんばかりの りっぱな作りの「それ」が置いてあったように見えたのです。 でも、「まさかなぁー」でした。だってぇー、階段の真ん中ですよ。 それも「絵に描いたように見事」なんですよ。ちょうどテレビのコントで頭に乗せるような「絵に描いたような形状」でした。 しかし確かめるには、わたしには勇気が足りませんでした。1階に着いたわたしはもう一度戻るのが恐かったのです。そのまま、会社へ向かいました。 しかし、これは与太話としては面白いと思い、当然のごとく会社に行ってからみんなに話ました。 「キャー!!ヤダーー。深谷さん、きたなーい!」
などと笑っていたが、話しているうちにこれは、やっぱりいたずらだとハッキリ思いました。 なぜならば、いったいどういう人間が階段の途中であのようにりっぱなものをすることが可能でしょうか?
その日は帰る時にエレベーターからよーく見ながら6階まで登りました。 ありません。朝あったはずの場所になんにもありません。
その月のその「ニュース」のコメントに非常に激怒なさった口調で
それを読んで、「とんでもないこと」の意味をすぐに悟りました。
と同時に大家さんの依頼は絶対に無理だなぁーと思いました。 だってぇー、そんなことを人のマンションの階段の真中でやっている人がいたとして、 ウン悪くそこを通りかかったとして、もしも目が合ってしまったらあなたならどうします? わたしは、怖くなってその場を動けなくなるのではないか?と思います。金縛りにあったようになると思います。 ただ、「本物だった」というとまた疑問が湧いてきますね。
それと所要時間は?瞬時か?
考えれば、考えるほど「不思議なことだらけ」でした。 ただ、これは、きっとそのたぐいまれなる技能を他人に誇示して喜ぶ「愉快犯」と確信しました。 だからきっと同じ犯罪をどこか他の建物でも夜な夜な試みるに違いないと思ったのでした。だからきっと捕まるだろうと。 その日から、北海道新聞の市内版を注意して隅から隅まで読んでいましたが、 それらしい犯行の記事は掲載されませんでした。 うーん、いったい犯人はなぜ?みんながきれいになりにくる「風呂屋」の階段の真中でやる必要があったのでしょうか?
きっと犯人はスパイダーマンのように強靭なバネを持った人間でしょう。 しかし、ほんとにスパイダーマンだったら、あのスーツを脱ぐのに時間がかかるだろなぁーと またいろいろと余計なことまで考えてしまっているうちに東京へ転勤の辞令が出てしまいました。 結局、いまだにこの事件の謎はわたしの中でなに一つ解明できないまま現在に至っているのであります。
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