2004.5.9 UP

                                                                                                                               













特 集





                                                  

                                                            2003.1.03 RENEWAL                                                      

 
          
                     My Favorite Movie Directors

 映画は、ただ単に暇つぶしのための映画なのではなく、総合芸術としての映画なのだと私は思う。
 
 文章で表現できないものや一枚のカンバスに収められないもの、そして音楽では再現できないものを映像で表現し、語りかけるのである。
 
 映像、台詞、音楽、風景、効果音等が調和した映画こそ、真の映画であり、それこそが映画の真髄なのである。

 その真髄を引き出す人こそが、俳優ではなく、映画監督そのものにほかならない。

外 国 監 督 主 な 作 品 日 本 監 督 主 な 作 品
アンドレイ ・タルコフスキイ
      
(ソ 連)
僕の村は戦場だった
ノスタルジア
惑星ソラリス

サクリファイス
ストーカー
アンドレイ・ルブリョフ
黒澤    明
七人の侍、野良犬
天国と地獄
用心棒、椿三十郎
酔いどれ天使
白痴、生きる
どですかでん
隠し砦の三悪人
蜘蛛巣城

イングマール・ベルイマン 
(スウェーデン)
沈黙、叫びとささやき
処女の泉
第七の封印、野いちご
魔術師、ペルソナ
秋のソナタ
冬の光
鏡の中にあるが如く
ある結婚の風景
ファニーとアレクサンデル
溝口  健二 西鶴一代女
雨月物語
近松物語
山椒大夫
ルキノ・ヴィスコンティ 
(伊)

ベニスに死す
若者のすべて
山猫、家族の肖像
地獄に落ちた勇者ども
異邦人
イノセント
夏の嵐
ルードヴィヒ
家族の肖像
小津安二郎 東京物語
晩春、秋刀魚の味
彼岸花
小早川家の秋
麦秋
晩秋
生れてはみたけれど
ミケランジェロ・アントニオーニ
(伊)
欲望、赤い砂漠
さすらい、情事
太陽はひとりぼっち
砂丘
さすらいの二人

ある女の存在証明
鈴木  清順 ツィゴイネルワイゼン
陽炎座、殺しの烙印
肉体の門
河内カルメン
フェデリコ・フェリーニ
(伊)
 
甘い生活、8 1/2
アマルコルド
サテリコン、道
世にも怪奇な物語の
 「悪魔の首飾り」
青春群像
魂のジュリエッタ




第七の封印

沈黙
叫びとささやき

ノスタルジア

ストーカー

惑星ソラリス

サクリファイス

地獄に落ちた勇者ども

ベニスに死す

恋人たち

去年マリエンバートで
 
昼  顔
  
博士の異常な愛情
  
東京物語
 
美女と野獣

情 事



他の監督の傑作紹介コーナーはここをクリック!


スタンリー・キューブリック
(米)
2001年・宇宙の旅
博士の異常な愛情
時計じかけのオレンジ
バリー・リンドン
ロリータ、突撃
現金に体を張れ

スパルタカス
ピエール・パゾリーニ
(伊)
アポロンの地獄
奇跡の丘
王女メディア
テオレマ
ジャン・リュック・ゴダール
(仏)
勝手にしやがれ
気狂いピエロ
軽蔑、カラビニエ
中国女
男性・女性

彼女について私が知って
 いる二、三の事柄
女と男のいる舗道
ルイス・ブニュエル
(スペイン)
忘れられた人々
昼顔、昇天峠
自由の幻想
アンダルシアの犬
小間使いの日記
ブルジョワジーの
      密かな愉しみ
嵐が丘
皆殺しの天使
哀しみのトリスターナ
欲望のあいまいな対象
10 ベルナルド・ベルトリッチ
(伊)
1900年、暗殺の森
ラストエンペラー
暗殺のオペラ
ラストタンゴ・イン・パリ
ルナ
11 アラン・レネ
(仏)
去年マリエンバートで
24時間の情事
薔薇のスタビスキ-
プロビデンス

ミリュエル
アメリカの叔父さん
12 フランソワ・トリュフォー
(仏)
アデルの恋の物語
恋のエチュード
華氏451
突然炎のごとく
黒衣の花嫁
終電車
隣の女
アメリカの夜
日曜日が待ち遠しい!
13 ルイ・マル
(仏)
鬼火
死刑台のエレベーター
恋人たち、好奇心
ルシアンの青春
14 ケン・ラッセル
(英)
恋する女たち
ボーイフレンド
マーラー
恋人たちの曲/悲愴

リストマニア
狂えるメサイア
15 ジョセフ・ロージー
(伊)
唇からナイフ
恋、エヴァの匂い
召使、夕なぎ
16
マルセル・カルネ
(仏)

悪魔が夜来る
嘆きのテレーズ
愛人ジュリエット
天井桟敷の人々
霧の波止場
17
オーソン・ウェルズ
(米)

市民ケーン
マクベス
審判
フェイク
18
マイケル・カコヤニス
(ギリシャ)

魚が出てきた日
その男ゾルバ
トロイアの女
肉体の証言
19
リリアーナ・カバーニ
(伊)

愛の嵐
ルー・サロメ・善悪の彼岸
20
イエジー・カワレロウィッチ
(ポーランド)


夜行列車
尼僧ヨアンナ
21
ルネ・クレマン
(仏)

しのび逢い
居酒屋
太陽がいっぱい
雨の訪問者
禁じられた遊び
狼は天使の匂い
生きる喜び
22
ジャン・コクトー
(仏)

オルフェ
美女と野獣
詩人の血
オルフェの遺言
23
ジョン・シュレジンジャー
(米)

真夜中のカウボーイ
ダーリング
日曜日は別れの時
マラソンマン
ヤンクス
24
リドリー・スコット
(英)

デュエリスト・決闘者
エイリアン
ブレード・ランナー
25
フランコ・ゼフィレッリ
(伊)

ブラザー・サン
    シスター・ムーン
じゃじゃ馬ならし
ロミオとジュリエット
26
マイケル・チミノ
(米)

サンダー・ボルト
ディア・ハンター
天国の門
27 ブライアン・デ・パルマ
(米)
ファントム・オブ・パラダイス
キャリー
殺しのドレス
ミッドナイト・クロス
28 ジョン・フォード
(米)
駅馬車
怒りの葡萄
わが谷は緑なりき
荒野の決闘
黄色いリボン
静かなる男
リバティ・バランスを撃った男
29 アルフレッド・ヒッチコック
(英)
暗殺の家
レベッカ、白い恐怖
ロープ、汚名
裏窓、見知らぬ乗客
知りすぎていた男
北北西に進路をとれ
ダイヤルMを廻せ!
ハリーの災難
間違えられた男
サイコ、鳥、マーニー
引き裂かれたカーテン
フレンジー
トパーズ、めまい
泥棒成金
海外特派員
バルカン超特急
30 ジョージ・ロイ・ヒル
(米)
明日に向かって撃て!
スローター・ハウス5
スティング
ガープの世界
31 ビリー・ワイルダー
(米)
失われた週末
サンセット大通り
第十七捕虜収容所
情婦
翼よ!あれが巴里の灯だ
アパートの鍵貸します
七年目の浮気
麗しのサブリナ
あなただけ今晩は
お熱いのがお好き
32 キャロル・リード
(英)
第三の男
落ちた偶像
オリバー!
フォロー・ミー
邪魔者は殺せ
空中ブランコ
33 ウィリアム・ワイラー
(米)
コレクター
探偵物語
ローマの休日
必死の逃亡者
噂の二人
黄昏
我らの生涯の最良の年
34 セルゲイ・エイゼンシュテイン
(ソ)
戦艦ポチョムキン
イワン雷帝
35 シドニー・ルメット
(米)
十二人の怒れる男
蛇皮の服を着た男
質屋
狼たちの午後
36 ニコラス・ローグ
(英)
地球に落ちてきた男
ジェラシー
37 トニー・リチャードソン
(英)
長距離ランナーの孤独
太陽の果てに青春を
ボーダー
トム・ジョーンズの華麗な冒険
38 デビット・リーン
(英)
戦場にかける橋
アラビアのロレンス
ドクトル・ジバゴ
ライアンの娘
39 ウディ・アレン
(米)
アニー・ホール
インテリア
マンハッタン
40 エリア・カザン
(米)
欲望という名の電車
波止場
アレンジメント
41 ジョン・ヒューストン
(米)
キー・ラーゴ
アフリカの女王
許されざる者
王になろうとした男
42 チャールズ・チャップリン
(英)
黄金狂時代
独裁者
街の灯
キッド
モダン・タイムス
殺人狂時代
ライムライト




 上記は、同じ監督の作品を2本以上観たものについて掲げた。追々紹介していくつもりであるが、これが全てではない。

 これらの監督による映画も私が20代までに観た映画の数々で、私が学生のころに、国立フィルムセンター、新宿のアートシアター、池袋・文芸座、岩波ホール等をかけ巡って観たものであり、拙宅にビデオで保存しているものを選んだ。

 しかしながら、私は映画館が嫌いである。同じ時間に、大勢の人と同じ映画を観ているのが、滑稽に思えるし、映画館は疲れる。それに空気も好きではない。

 映画館は大画面で迫力が違うというが、テレビで観ても差を感じたことはない。むしろ、映画館の大画面を右から左へと視線を移しながら、果ては字幕まで視線を移さなければならない余分な労力を思うと、一定の視線で観ることのできるテレビのほうが、私には向いている。
 
 今やBSデジタル放送でハイ・ヴィジョン映像が流れ、映画館で見るような感動の画質で映画を堪能できるのである。映画は好きな時間にゆったりと鑑賞したいものである。

 無論反対意見のほうが多いことは百も承知のことであるが、私は家での鑑賞スタンスを好む。
 この他、最近の鬼才・天才と呼ばれる監督らがいるが、いずれも上記監督らの亜流であり、けっして凌駕するものではないと私には思える。

 
 凌駕しているものは、映像の加工技術と機材の進歩だけである。
 
 また、これらの全てを語ろうといっても、資料を見て記憶を呼び起こさないと語れない部分があるというのも事実であり、私も記憶の天才ではなく凡庸の一人に過ぎないことを記しておきたい。
(2001.10.14) 

2006. 2. 20
 映画関連の記事はこちらでも。

2005.10.19
ハイヴィジョン・シアター(私的HV普及促進委員会)に『山の郵便配達』を追加。

2005. 6. 30
ハイヴィジョン・シアター(私的HV普及促進委員会)に『初恋のきた道』を追加。 6

2005. 5. 17
ハイヴィジョン・シアター(私的HV普及促進委員会)に
『ラスト・サムライ』を追加。
2005. 4.  5
ハイヴィジョン・シアター(私的HV普及促進委員会)に『紅 夢』を追加。

2005. 1. 17
ハイヴィジョン・シアター(私的HV普及促進委員会)に『パイレーツ・オブ・カリビアン〜呪われた海賊たち』、 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』を追加。

2004. 12.  5
  ハイヴィジョン・シアター(私的HV普及促進委員会)に『愛に関する短いフィルム』『死ぬまでにしたい10のこと』を追加。

2004. 10.13
  ハイヴィジョン・シアター(私的HV普及促進委員会)に『カラー・オブ・ハート』『チョコレート』『デアデビル』を追加。


2004.  7.27
  新しくHV-THEATER(ハイヴィジョン・シアター)を開設することとした。こちらは新旧、名作・駄作を問わずHV放送で観た映画は、全くの私的偏見をこめてその映画評を記している。

2004.  5. 9
  ちょっと拾い物かもしれない映画を観た。日本では2年前に公開されたウェス・アンダーソン監督の『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(’01・米)がその作品である。

  まず、映像に惹きこまれてしまう。何の予備知識もなしに出演者の顔ぶれを見て、ジーン・ハックマン、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・スティラー、グウィネス・パルトロウ、ダニー・グローヴァー、ビル・マーレイ等、堂々たるメンバーだから、どんな映画だろうかと録画しておいて試しに観てみたのであるが、これがついつい最後まで観せられてしまった。

  一言で言えば、伝言板にも書いたように『テネンバウム家』の栄光と衰退と、その再生だが、序章・終章を含め全10章からなるこの映画の筋書きは単純であるが言葉にすると意外に難しい。
 
  テネンバウム家の家長であるロイヤル・テネンバウム(ジーン・ハックマン)は超一流の弁護士でその名声は頂点にあった。そして、ロイヤルの誠実さに欠けた行為により22年間にわたり別居することとなる妻・エセル(アンジェリカ・ヒューストン)は、3人の子供をスパルタ的に育てた考古学者であるが、『天才一家』という書物を記し大ベストセラー作家となる。

  そして、長男・チャスは遺伝子学的発明と不動産売買と国際金融に神がかり的な才能を発揮し、ロースクール6年生にして大金持ちに。長女・マーゴは養女だが、少女の頃から劇作家としての才能にあふれ、戯曲コンクールで5万ドルの賞金を得て、12歳で脚本家デビューを果たし、早熟の天才劇作家として一躍脚光を浴びる。次男・リッチーはプロテニスでV3を達成し、将来を嘱望された天才テニス・プレイヤー。

  しかし、その後の20年は失敗と裏切りで、一家はばらばらになり、ロイヤルは長男・チャス(ベン・スティラ−)からの訴訟で弁護士資格を剥奪され、エレベーターボーイに身を落とす。母親エセルは会計士で黒人の恋人・ヘンリー(ダニー・グローヴァ−)からプロポーズされ、それを受ける。

  長男・チャスは妻を飛行機事故で亡くして以来、仕事もしないで子供3人とおそろいのアディダスの赤いジャージを着て偏執狂的にさえみえる避難訓練に明け暮れる。長女・マーゴ(グウィネス・パルトロウ)は精神科医のラレイ(ビル・マーレイ)を夫に持つが・・・それにしてもグウィネス・パルトロウは出る場面、出る場面、絶えず煙草を吸っているが、彼女が煙草嫌いだったらさぞつらかっただろう。しかしながら、彼女が煙草を吸うことをテネンバウムの家族は誰一人として知らないという。・・・、レズなどの様々な体験を経て、次男・リッチー(ルーク・ウィルソン)と隣家に住む次男の親友・イーライ(オーウェン・ウィルソン)との三角関係ならね四角関係に陥る。一方、次男・リッチーは試合中、突然勝利を放棄する行動をとり、引退して世界を放浪し、その後、長女・マーゴとの関係に思い悩み自殺を図る。

  ロイヤルが妻と子と別れて、別居するに至った原因は、チャスの仲間たちとおもちゃのピストルでの敵味方に分かれての銃撃戦で、味方のはずのロイヤルが後ろからチャスを撃ってしまう無神経さ、マーゴが12の誕生日に催した自作自演の劇を「嘘っぽい」とけなしてしまう無神経さという、大人の分別にかけるロイヤルの自己中心的でわがままな性格からだろう。

  そんな中、ホテルを追い出され、宿泊金もなくなったロイヤルが口からでまかせか最後にはそのとおりになるのだが、「あと6週間の命しかない。最後くらい家族一緒でいたい」とエセルに申し出て、一つ屋根の下に『テネンバウム一家』が22年ぶりに集うことになった。

  その後、ロイヤルは罪ほろぼしのためか、祖母の墓参りに家族全員を誘って出かけたり、エセルとヘンリーとの仲を裂こうとするかに思われたが、離婚届に署名し、エセルとヘンリーが結婚できるようする。また、チャスの可愛がっていた死んだビーグル犬の代わりに別の犬をプレゼントしたりしてと家族にとっていいことをするようになる。

  果たして、一家離散状態にあった『テネンバウム家』の再生はなされるのか・・・。

  冒頭にも述べたとおり、キャラメル色がかった・・・但し、私だけが感じた色調かもしれないが・・・この作品の映像は独特のカラーがある。また、シンメトリーな映像には古典的雰囲気もあり、へんてこな5人家族一人一人を描写する語り口にも一種独特のものがる。言葉を替えれば、『テネンバウム家』という一家の壮大な叙事詩を観ている気にさせられてしまうのである。

  『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』観終って、もう一度観なおしたいと思った映画は、ここ最近なかったことである。
  そして、ウェス・アンダーソン監督の名はこの作品ではじめて知ったが、31歳でこのそうそうたるメンバーを操ったにもかかわらず、この作品が『天才マックスの世界』に続く2作目の長編だというから、さらに驚きである。

  余談だが、隣家のイーライ役を演じたオーウェン・ウィルソンはウェス・アンダーソンとこの作品のシナリオを共同執筆しており、あの個性派女優、ジーナ・ガーションの夫(日本のファンサイトは否定しているので?が付くが)であるとのこと。


2004.  3.13
  昨年の12月、イングマール・ベルイマン映画の常連女優のイングリット・チューリンが死去した。
 私がはじめて、イングリット・チュ−リンの名を知ったのは、『沈黙』(’63・スェーデン)であった。その知的雰囲気とどことなく陰のある容貌は美しかったが、晩年の『カサンドラ・クロス』以降の彼女はその影もなく、見るに忍びなかった。そんな彼女を国際女優に押し上げたのは、やはり、この『沈黙』であろう。


 
戦時下の架空の都市を通過する猛暑で気だるい列車の中、イングリット・チュ−リン演じる翻訳家のエステルと精神的に全く異なる妹のアナ(グンネル・リンドブラム)、そして、その子供ヨハンの3人がスウェーデンに帰ろうとしている。その途中、エステルの発作で3人はたまたま列車が止まった駅で下車し、字もわからず言葉も通じないティモカという街ホテルに泊まる。

 アナとヨハンはベッドで眠るが、気分が落ち着いたエステルは、煙草をふかしウィスキーをラッパ飲みしながら翻訳の仕事をはじめる。それから、ウィスキーがなくなりエステルは老給仕に持ってこさせる。その後、彼女は満たされぬ不安を紛らわせるためか自慰をはじめる。目覚めたアナは一人で街に出かけようとするが、それをエステルはとがめる。しかし、アナはそれを無視して出て行く。

 残されたエステルはヒステリーに陥りウィスキーをがぶ飲みしベッドから転げ落ち、
 「冷静にならなければ、理性的なのが私の長所なんだからと」
と呟く。

 アナはカフェのボーイと関係を結ぶ。ホテルに帰った妹から発散するセックスに欲情さえ感じたエステルは、そんな自由な性格を持つ妹を羨んだ。知性と教養に支えられてきたエステルには耐え難いものがあったのである。そして、また、外出しようとするアナをエステルは制した。男に抱かれに行くに違いない妹を見送りながら、自分の感覚が燃えてくるのを抑えようがなかったのだ。

 アナにとっては、優等生で父親にお気に入りの姉に対する反発は、ただ感覚的な愛の行動にすりかえる以外なかった。男はホテルにやってきていた。母親と見知らぬ男が抱擁し、部屋に入って行くのを廊下で遊ぶヨハンが見ていた。エステルはそれを聞いてその部屋に行った。あられもない姿を見せるアナ。そしてアナのエステルに浴びせる罵声。

 「姉さんは思いあがっているのよ。自分の主義を、さも大事そうに騒ぎたて他人に押しつけているだけだわ。生命だか道徳だか知らないけれど、それが理解できないうちはじっとしていられない。姉さんは私が嫌いというより、むしろ怖いのよ。すぐに愛、愛と口にするけれど、自分への憎悪を私への憎悪にすりかえているだけじゃない。姉さんは憎悪の塊なのよ。・・・姉さんはパパが死んだときに、もう生きていたくないといったくせに、なぜまだ生きているの。何のために。」

 そこには、もう姉と妹をつなぐものは何ものもなかった。

 朝になった。一夜を廊下で過したエステルの容態はさらに悪化していた。発作で窒息死した父親のように死にたくはないと思うエステル。アナは、病むエステルに心を残すヨハンの手をひいてホテルを出て行った。汽車の中でヨハンはエステルから渡された手紙を開いた。そこには、ティモカの国の言葉で『ハジェク』=精神とだけ書かれていた。エステルはティモカで覚えた言葉をヨハンに教えると約束していたのであった。『ハジェク』と言葉にして呟き考え込むヨハン。それは、エステルの遺書になるかもしれない。エステルはヨハンに何を語ろうとしたのか・・・。

 
 理性的であろうとするエステルと奔放に本能の赴くまま生きようとするアナ。この映画は対照的な二人の姉妹の対峙劇と言ったらいいだろうか。それは、精神と肉体の葛藤そのものであり、芸術家の苦悩とするところでもある。エステルはその答をヨハンに託そうとしたのか。首をかしげ考え込むヨハンにはアナの血が流れるているのだが・・・。

 そして、この映画で語られた沈黙とは。ある書物では、この沈黙は2種類で、「自分の周囲のものが何か話し合っているのはわかるが、その言語を知らないために、話の内容が理解できない状態」と「相手の言葉は知っているので話の内容はわかるけど、その背後にある考え方や立場が理解できないためのすれ違う状態」と書かれている。

 確かに、その通りにちがいないが、私はお互いの精神が響きあうことのない虚しい状態の沈黙ではないかと考える。ベルイマンはそれを神の沈黙ととらえる。神の不在。それは人間の精神の腐敗と退廃。そして、その状態こそが神の死を意味するのだろう。いつの世も、その沈黙は深く広大な口を広げて人間を飲み込もうとしているのである。

 本作品はベルイマンの神の沈黙3部作といわれる、『鏡の中にある如く』、『冬の光』に続く作品である。日本公開当時、アナとホテルの給仕とのセックスシーンとエステルの自慰シーンはカットされたらしい。


2004.  2. 2
   既に1月も過ぎ、2月に入ってしまった。ここで昨年の12月から今までに観た映画を記しておこう。


○ 外国人による仁侠チャンバラ映画、タランティーノ監督の『キル・ビル』
○ 『マトリックス』1作でとどめていればよかったウォシャウスキー監督の『マトリックス・レボリューションズ』
○ フランクシナトラ主演の『オーシャンと11人の仲間たち』をリメイクしたスティーブン・ソダーバーグ監督の『オーシャンズ11』
と企業の汚染摘発をやってのけた女性の活躍を描いた同監督の『エリン・ブロコビッチ』
○ 世界最大の覇者チンギス・ハーンの幼年期から成人期に至るまでを描いたサイフ監督の『蒼き狼 チンギス・ハーン』
○ 中国が明から清へと時代が移る時に登場した中国と日本人のハーフ英雄・国姓爺が、オランダ支配の台湾を救うまでを描いた呉子牛監督の『国姓爺合戦』
○ 日本刀を背中に差したウェズリー・スナイプス演じるバンパイア狩りのギレルモ・デル・トロ監督の『ブレイド2』
○ タイム・スリップした落ち目の貴族の息子とキャリア・ウーマンとの恋を描いたジェームス・マンゴールド監督の『ニューヨークの恋人』
○ 邦画『りんぐ』をリメイクしたゴア・バービンスキー監督の『ザ・リング』〜主演のナオミ・ワッツはよかったが、少しも怖くない?
○ ミス・キャストと思われるミッキー・ロークの裸が見るに耐えられない、聖フランチェスコを描いたリリアーナ・カヴァーニ監督の『フランチェスコ』
○ リメイクした意図がよくわからなかったサイモン・ウェルズ監督の『タイムマシン』
○ 気弱な青年がスパイダーマンとして活躍して自身も頼れる男として変身してしまうサム・ライミ監督の『スパイダーマン』
○ ゾンビを殺しまくるポール・アンダーソン監督の『バイオハザード』
○ 父親の影響を受けた黒人蔑視の中年男が、過酷過ぎる運命を担わされた黒人女との恋に落ちるマーク・フォスター監督の『チョコレート』
○ 『アーサー王の伝説』のナイトを主人公にした低予算?書割演劇風のエリック・ロメール監督の『聖杯伝説』
○ タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』をリメイクし、哲学的中身を削りに削り過ぎたスティーブン・ソダーバーグ監督の『ソラリス』

とりあえず、上記作品について、いま私見を述べるつもりはないが、面白いと思った、あるいは感心したのは『聖杯伝説』である。いつかロメール監督作品の一つとして感想を書くかもしれない。

 それから、手元に『ラスト・サムライ』、『ミニミニ大作戦』、『ブルース・オールマイティ』、『シービスケット』、『エベリン』、『ファインディング・ニモ』、『トゥーム・レイダー2』
などのストックもあるが、いつ見られることやら。
2003. 1. 1〜2003.12.31までのCINEMAはこちら


マルセル・カルネ
『天井桟敷の人々』
エリア・カザン チャン・イーモウ
『英雄(HERO)』
ジョン・シュレジンジャー
『真夜中のカウボーイ』
グレゴリー・ペッグと
キャサリン・ヘップバーン
ウォシャウスキー兄弟
『マトリックス・リローテッド』
魂の映像詩人
タルコフスキー
ピーター・イエーツ
『ブリット』
アンドレ・カイヤット
『目には目を』
スティーブン・ダルトリー
『リトル・ダンサー』


2002. 1. 1〜2002.12.31までのCINEMAはこちら


ジャン・ルノワール
大いなる幻影
フェデリコ・フェリーニ
ジュゼッペ・トルナトーレ
『マレーナ』
ルイ・マル
『死刑台のエレベーター』
セルジオ・コルブッチ
『殺しが静にやって来る』
ジョン・ヒューストン
『アフリカの女王』
リナ・ウェルトミューラー
『流されて』
リリアーナ・カヴァーニ
『愛の嵐』
オーソン・ウェルズ
『市民ケーン』
 ステファン・エリオット
『氷の接吻』
セルゲイ・エイゼンシュテイン
『戦艦ポチョムキン』
ショーン・コネリー
ビリー・ワイルダー アルフレッド・ヒッチコック ティム・バートン
『猿の惑星』
映画音楽
名作に美女ありき
ルキノ・ビスコンティ
- -


2001.10.17〜2002.12.29までのCINEMAはこちら


キューブリック
『2001年・宇宙の旅』
シドニー・ルメット
『十二人の怒れる男』
黒澤 明 アン・リー
『グリーン・デスティニー』
リドリー・スコット
『ブレード・ランナー』
タルコフスキー1 タルコフスキー2 アラン・レネ
『去年マリエンバートで』
カルト映画 ベルイマン
『狼の時刻(とき)』
バネッサ・レッドグレープ ミケランジェロ・アントニオーニ
『欲望』