カラビニエ Les Carabiniers

1963年 フランス



1963年 フランス
監督:ジャン=リュック・ゴダール
出演:アルベール・ジュロス、
   マリーノ・マゼ、
   カトリーヌ・リベイロ、
   シュヌウィエーブ・ガレア
『軽蔑』と同時期に作られた作品で、当時パリでも一週間しか公開されなかったというから、これは幻の作品と言っていいと思う。ゴダール映画によく見られるモノローグを駆使した哲学的な思念は、すべて具体的なエピソードを伴った寓話というカタチに置き換えられているため、ゴダール映画にしては非常に分かりやすい作品になってるのがいいね。アンナ・カリーナ時代ともジガ・ヴェルトフ時代とも違う……こういうタイプの作品をゴダールはもっと作ればよかったのに、と思ってしまったほど。

戦争目的の本質が「収奪」にあることをここまでアイロニカルに描いた映画ってそうそうないんじゃないかと思うけどどうですか? 物語後半の絵葉書を並べていくシーンなんてそこらをシンボリックに突いてる上に、ゴダールらしいセンスの良さも光る名場面。低予算で作られた80分の小品でも、これほど素晴らしい映画に仕上げてしまうゴダールにいまさらながら感動した。あまりにあっけないラストシーンも、戦争の馬鹿馬鹿しさをよく表していて素敵でした。個人的には『はなればなれに』('64)より好きかもしんない。




★★★★ 扇町ミュージアムスクエアにて鑑賞 2001/09/22





私は好奇心の強い女 i am curious: yellow

1967年 スウェーデン



1967年 スウェーデン
監督:ヴィルゴット・シェーマン
出演:レナ・ニーマン

公式サイト
過激な性描写を巡ってアメリカで裁判沙汰にまでなった 67 年作のスウェーデン映画。25 年の時を経てノーカット版が日本初公開となった。とは言っても正確には数ヶ所でペニスにボカシ処理を施してあるから、完全にノーカットというわけではない。71 年に日本で公開された時は 45 ヶ所もカットされた状態だったから、それに比べたらずいぶんマシではあるんだが、修正箇所の減少はさして問題ではない。なぜなら今その「過激な性描写」を目の当たりにしても、当時の驚きは既になくなってしまっているからだ。

本作は決してただのポルノ映画というわけではなく、60 年代後半におけるユースカルチャーと政治の衝突がもたらした、当時の「気分」を濃厚に反映した作品でもある。性と政治が反体制運動の急先鋒と考えられたからこそ、寺山修司はやや興奮気味に本作を支持する文章を書いた(このテキストは『地球をしばらく止めてくれ ぼくはゆっくり映画を観たい』所収)。映画の中で演劇専攻の大学生レナ・ニーマンは街に飛び出し、通りすがりの人々に「我が国に階級は存在すると思いますか?」「非暴力主義についてどう思いますか?」などとインタビューをしてまわる。しかしレナの政治的主張はまだ熟れない果実の不潔さとも言うべきもので、今となっては特にどうということもない。

この映画が作られてから25 年が経ち、性と政治によってシンボライズされた反体制が古色蒼然としたものになった今、我々は本作のどこを観るべきなのだろう? 公式サイトを見れば一目瞭然なのだが、配給会社はこの作品が持つスキャンダラスな面だけでなく、どうもオシャレ映画として現代に甦らせたいという意向を持っているようだ。しかしオシャレ映画というには、主演女優レナ・ニーマンのカラダは肥えすぎている。肉がダブついているし、おまけに二重あご。女優の魅力が命のオシャレ映画にあって、レナ・ニーマンではやや役不足の気がする。とするとやはり本作は、ポルノ解禁を促した歴史的作品として記憶しておくのが妥当な評価なのかもしれない。




★★ シネ・リーブル梅田にて鑑賞 2002/02/18





息子の部屋 la stanza del figlio

2001年 イタリア



2001年 イタリア
監督:ナンニ・モレッティ
出演:ナンニ・モレッティ、
   ラウラ・モランテ、
   ジャスミン・トリンカ、
   ジュゼッペ・サンフェリーチェ

公式サイト
昨年度のカンヌ映画祭パルムドール受賞作。間違いなくこれは傑作だと思う。過去に観たモレッティ作品は『僕のビアンカ』('84)と『ナンニ・モレッティのエイプリル』('97)の 2 本だけなので偉そうなことは言えないけど、個人的にはこの 2 本よりずっと良かった。これまでの作品に見られたシニカルなユーモアや政治的なメッセージなど、小難しいところは一切ない。コアなモレッティ・ファンは物足りなさを感じるかもしれないが、パルムドール受賞作の名にふさわしい、多くの人に見てもらえる作品に仕上がっていると思う。

息子の死とその克服という重いテーマにもかかわらず、悲しみをこちらに押しつけてくることはまったくなし。至って自然で変に衒ったところもなく、過剰な演出をできるかぎり抑えているのが良い。かと言って淡々としているというのではなくて、しっとりとした味わいがあり、じんわり心に沁み入るものがある。小さなエピソードの積み重ねがすごく良い。モレッティはこういう作品が作れるのだから、もう「イタリアのウディ・アレン」という呼称は不要だろう。

ラストシーンはフランス国境に広がるモナコの海。バックに流れるブライアン・イーノの「By This River」がたいへん美しい。これはモレッティ演じる父親が、亡くなった息子のために買い求めた CD の中の曲という設定になっている。




★★★★ シネフェスタにて鑑賞 2002/02/24









BACK TO TOP

HOME