原価に関するミニ知識中級編


このページは、原価に関するミニ知識初級編の理解が前提になります。

『絵でみる原価計算のしくみ』を出版しました。


参考文献・・・『絵でわかる超入門原価計算』


参考文献・・・『実践原価企画』環境経営に対応した理想ライフサイクルコストの追求


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原価に関するミニ知識中級編
   
“原価計算の流れは2つある”

 
    
“技術者に必要な原価計算”

   
“事前に材料費・加工費を計算するには”

 
    
“加工費計算と減価償却費”

   
“原価と利益はどういう関係か”

 
    
“損益分岐点分析の使い方”

   
“利益を生み出す方程式”

 
    
“原価を下げる2つの方法”

   
“製品の機能をお金に換算する”

 
    
“技術段階のコストダウン評価”



“原価の次は統計にチャレンジしてください”




原価計算の流れは2つある
原価計算は大きく別けて、ものを作る前に行う「事前原価計算」とものを作った後に行う「事後原価計算」に分けられます。事前原価計算は、あくまでも見積であり、このくらいかかるという予定の原価です。事後原価計算は、発生したお金はすでにわかっているので、実際原価が計算できます。

事後原価計算は、製品の製造活動や販売活動が終了した後に実際にかかった原価を集計することから、実際原価計算とも呼ばれます。

■事後原価計算のやり方

事後原価計算である実際原価計算は、実際の発生費用がすでにわかっているので、次の3ステップにより単位あたりの原価を計算します。

@まず費目別に計算し(費目別原価計算)、
A次に部門別に計算し(部門別原価計算)、
B最後に製品別に計算します。(製品別原価計算)

■事前原価計算のやり方

事前原価計算の場合は発生したお金がわからないので、実際原価計算とは全く逆の手順で単位原価を計算します。材料費は材料単価×材料消費量、加工費は加工費レート/時×時間で計算します。材料単価と加工費レート/時は基礎資料として事前に準備し、材料消費量と時間は製品毎に求めます。

事前原価計算は、あくまでも見積であり、このくらいかかるという予定の原価を算定するので、見積原価計算とも呼ばれています。


技術者に必要な原価計算
技術者に必要な原価計算は、事前原価計算である見積原価計算です。

見積原価計算における原価要素の区分は、経理上の区分(材料費、労務費、経費)とは若干異なり、
直接費、間接費を主体にした費目区分を行っています。

正確な原価を計算するには、特定の製品に使われたことが明らかなものは、その製品の原価として直接集計します。また、どの製品に使われたかがわからないものは、何らかの基準を設けて、特定の製品の原価に割振ります。

通常、見積原価計算では直接費を材料費、間接費を加工費という形にまとめてしまいます。経理上と見積上の原価要素分類では、材料費は材料費、労務費と製造経費は加工費の中に入れて両者のつながりをつけるやり方が一般的です。




■見積原価計算のやり方

見積原価計算は原価費目の粗さにより、概算見積、基本見積、詳細見積の3段階に分けることができます。どの粗さにするかは、見積のスピード性と正確性を考えて決定しますが、技術者に一番必要な見積は詳細見積です。

概算見積は見積対象の原価費目は細分化せずに、原価を計算します。基本見積は、見積対象の原価費目を材料費と加工費に区分して計算します。詳細見積原価計算は、材料費、加工費共に「単価×消費量」で計算します。

いずれの方法でも、コストテーブルや単価表などの見積基礎資料は、事前に用意する必要があります。



事前に材料費・加工費を計算するには
■材料費計算のやり方

材料費の中身が、@素材費または原材料、A買入部品費、B燃料費、C工場消耗品費、D消耗工具器具備品の5つに分類できることは
初級編でお話しました。この中で、直接材料費である@素材費または原材料、A買入部品費などを材料単価表に登録します。

単価表を作成するとき、素材費または原材料のように時価で単価が変動するような材料を購入している場合には、相場情報を得ることが必要です。

材料の単価を整理し、単価表として準備すれば、あとは個々の製品がどれだけの材料を消費するかの計算です。材料の消費量を求めると、材料単価×材料消費量で材料費は計算でまきす。

■加工費計算のやり方

街でよく見かけるリラクゼーションサロンでは、足ツボマッサージやクイックマッサージが人気です。料金は時間により異なり3,000円〜5,000円程度ですが、この中で最も高いのは人件費です。

これ以外に、タオルやシーツの消耗品、癒し系CD代や電気代、さらに建屋、ベッドなどの設備の償却費も含まれます。これらの原価にリラクゼーションサロンの儲けを含めて、30分で3,000円が相場です。癒しの時間は、1分が100円につく計算になります。

加工費の単価は、加工費レートと呼びますが、会社の加工費レートも、儲けを除けばリラクゼーションサロンと同じように計算することができます。加工費レートは、加工費を工数か時間の原単位で割って求めます。

加工費レートに製品を作る工数・時間を掛け算すると加工費は計算できます。


加工費計算と減価償却費
会社でも設備などの固定資産は、長期間使用する間に徐々にその価値が減り、また使用しなくても古くなるにしたがって価値が減っていきます。

固定資産を取得するためにかかった金額は、それを取得した会計期間だけの費用とするのではなく、使用できる会計期間に費用として配分します。この手続きを減価償却といいます。

たとえば5年間使える設備を10,000万円で取得したとします。この金額を取得した会計年度(1年間)だけの費用とすると、10,000万円が製造原価に加わるので、高い原価になってしまいます。そこで取得金額の10,000万円を設備が使用できる5年間に費用(減価償却費)として配分します。

■減価償却費の計算方法

減価償却費を計算するには、次の金額が明らかになっていなければなりません。

・償却基礎価額…固定資産の取得価格
・残存価格…固定資産が使用できなくなったときの処分価格(取得価格の10%)

減価償却費は「取得価格―残存価格」を、耐用年数または利用度に応じて、使用する各期間(耐用年数)に費用として配分します。代表的な配分方法は、定額法定率法の2種類です。

取得価格が10,000万円、耐用年数が5年間の設備の減価償却費は、定額法で計算すると1,800万円、定率法では3,690万円になり、2倍の違いがあります。






次のグラフは、取得価格の10,000万円から減価償却費を引いた年度別の設備価額です。5年後には、定額法、定率法ともに1,000万円になりますが、1〜4年の価額に注目してください。




■事前原価計算での減価償却費

減価償却費の中身は、建物、設備、車両などです。この中で加工費レートには、設備の減価償却費を入れないで計算し、別途設備費レートを設定します。

設備費レートは、設備グループ別、または設備別に設定しますが、計算式は次に示すとおりです。






原価と利益はどういう関係か
売上から原価を引くと利益になりますが、原価の中身により利益の種類が変わってきます。代表的な利益には次のようなものがあります。

■会社が生み出した正味の価値が付加価値

『付加価値を高めましょう。付加価値を生む仕事をしましょう。』などと付加価値という言葉は会社でもよく使われます。それでは「付加価値とは何ですか。どのようにして計算するのですか?」と聞かれるとハタと困ってしまうことが多いようです。

付加価値とは企業が生みだした正味の価値を言い、売上高に対する付加価値の比率を付加価値率といい、次に示す2つの計算方法があります。

@控除法:付加価値=売上高−外部購入価値(材料費)
A集計法:付加価値=経常利益+支払利息+減価償却費+賃借料+労務費

■売上高と変動費の差額が限界利益

限界利益とは、売上高と変動費との差額をいい、売上高に対する限界利益の比率が限界利益率です。変動費は限界原価とも呼ばれ、その中身は、材料費と変動加工費です。

次に示す資料では、売上高150万円、変動費97万円ですから差引53万円が限界利益になり、限界利益率は35%(53万円÷150万円×100)です。そしてこの限界利益で残りの固定費をカバーできれば、利益をあげることができます。




■粗利益と営業利益はどう違う

粗利益を求める計算式は、『粗利益=売上高―製造原価(売上原価)』であり、売上高との対比でみると次のようになります。




営業利益は、会社の営業努力の結果を最もよく表している利益です。計算式は、『営業利益=粗利益―販売費・一般管理費』です。




損益分岐点分析の使い方
売上高が増えたり減ったりしたら、原価や利益がどう変化するかの予測は、損益分岐点分析で行います。損益分岐点というと何か難しく聞こえますが、売上高と原価が等しくなる、収支トントンの売上高のことです。

損益分岐点分析で中心となる大切な考え方が
限界利益です。

■損益分岐点図表の見方・描き方

損益分岐点分析を行うには、費用を変動費と固定費に分ける必要があります。これにより次のような図表を描くことができます。これが損益分岐点図表です。




売上高と総費用線の交点が損益分岐点です。損益分岐点よりも売上高が大きくなると利益が生じ、少ないと損失が生じることが図表から分かります。損益分岐点は利益と損失の分かれ目であり、損益が0の売上高です。

損益分岐点売上高の計算は、次の公式を利用します。




■損益分岐点の位置を低くする3つの方法

損益分岐点図表をよくみると、損益分岐点の位置を低くするには次の3つの方法があることが判ります。

@売価の引上
販売価格を上げると、利益の幅が増え同じ数量を販売すれば、利益の額は増大します。損益分岐点の位置が、販売価格上昇前と比べて低くなります。




A変動費の低減
単位当たりの変動費を引き下げると、図表の変動費線の傾きが緩やかになり、利益が増大します。損益分岐点の位置が、変動費引き下げ前と比べて低くなります。




B固定費の低減
固定費を低減すると、その分だけ費用が減り(図表の総費用線が下方に平行移動)、利益が増大します。損益分岐点の位置が、固定費削減前と比べて低くなります。




利益を生み出す方程式
永遠に会社を続けていくには、毎月必要な利益を生み出さなければなりません。会社を継続するには、「売上高―原価=利益」を「利益=売価―原価」に変えて経営する必要があります。

利益=売価―原価は、利益を生み出す方程式とも言われ、利益を確保するための常道です。この方程式では、まず必要な利益(目標利益)を決め、その利益を確保する売上高(目標売上高)を計画します。

そしていくらの原価でやっていけばよいかを計算します。この原価を
目標原価とよびますが、実際原価が目標原価に収まれば、会社として必要な利益は確保できるわけです。

この一連の仕事をうまく進め、確実に利益を出している会社では次のような活動を展開しています。目標利益、目標売上高を決定したら、目標売上高を達成するのに今までどおりの活動ではいくらの原価になるかを試算してみます。

この原価が見積原価ですが、見積原価は目標原価より高いのが一般的です。現状の実力値を示す見積原価では目標利益の確保はできないので、見積原価と目標原価の差額を改善するコストダウン計画を部門別に作ります。

各部門は、計画の達成を目指してコストダウン活動を実践していきます。



この例では、10億円のコストダウンを実現すれば、目標利益15億円が確保できます。


原価を下げる2つの方法
コストダウン活動には、技術部門が中心になる原価低減(コストリダクション)活動と製造部門中心の原価維持(コストコントロール)活動の2種類があります。

原価低減活動は、今までのやり方よりうまい方法を見つけだし適用する、いわゆる『改善活動』のことです。また、原価維持活動は、『ムダ排除』により原価を管理する活動です。

■原価低減活動によるコストダウン

原価低減活動には、次のような項目があります。

・製品の構造を簡単にし、部品点数や加工工程を少なくする。
・不良低減のための新しい方法や金型設計の見直しで歩留を向上させる。
・新しい道具を工夫したり、作業方法の変更で製造工数を減らす。

これらの項目は、理想的なものづくりを追求し、生産条件を改善することによってコストダウンを実践することを狙っています。

■原価維持活動によるコストダウン

原価低減活動により引下げられた
標準原価は、うっかりしているとムダが発生し、元の状態に戻ってしまう危険性があります。

ムダは、日々の仕事をきっちり管理することで退治できます。ムダ排除を目的とした原価維持活動は、製造部門の管理者が自分の仕事を効率的に行う管理努力によるコストダウン活動なのです。

『ムダ排除』により標準原価を管理することが原価維持活動で、通称『標準原価管理』と呼ばれています。


製品の機能をお金に換算する
材料費の原価低減には、VE(バリュー・エンジニアリング)と呼ばれている手法が有効です。

VEによる原価低減は、ただ材料費を削減すればよいというものではありません。VEでは価値、機能、原価の3つの軸をもとに原価低減を考えていきます。3者の関係は次のような式で表します。




この式のようにVEでは、価値を機能の達成と原価との関係でとらえています。ここでの原価は、VE対象の製品、ユニット、部品別の見積原価計算により算定します。

機能と原価の関係で、価値を高めるためには、以下のような組み合わせが考えられます。

@ 機能を一定に維持し、原価を下げる。
A 機能を向上させ、かつ、原価を下げる。
B 機能を向上させ、原価はそのまま。
C 少々コストは上がるが、それ以上に機能は向上させる。
D 少々機能は下がるが、それ以上に原価を下げる。


技術段階のコストダウン評価
技術段階におけるコストダウンの実施結果は、「目標原価達成率」「コストダウン率」で評価します。

それぞれの計算式は次のとおりです。







目標原価達成率は、目標原価と標準原価の差異であり、コストダウン率は見積原価と標準原価の差異を表します。


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