製品機能に対するシステムの創造

(1)TRIZによるシステムの創造
■ 現在の負荷発生装置の概要

A社の負荷発生装置は、図表1のような磁石を回転する導体に近づけることにより発生する渦電流を利用している。その原理は、導体のそばで磁石を動かすと、フレミングの右手の法則にしたがって導体上に渦をまいたように電流が流れる渦電流を応用している。

図表1

図表2は、現在の負荷発生装置の一部である。渦電流の原理を応用し、回転をチェーンでギャーに伝達して導体(銅板)を回転させ、電磁石により渦電流を発生させる構造となっている。構成部品は導体(銅板)、電磁石、ギャー、チェーン、軸が主なものである。

図表2

コスト面では、導体(銅板)と電磁石が負荷発生装置の60%を占めている。特に導体(銅板)は、図表3のように材料費の技術歩留率が60.1%と低いことと、回転中の導体の振れが渦電流負荷によって発生するトルクに影響することから組立調整に多くの工数を必要としている。

図表3

■ 負荷発生装置の目的機能と技術的手段の明確化

図表4は、負荷発生装置の目的機能、技術的手段、基本機能を整理したものである。

図表4


■ TRIZによるアイデア発想

現在の負荷発生装置の構造で回転数に比例したトルクを発生させるためには、導体(銅板)の平面精度の公差を少なくする必要がある。このこのとが、材料歩留の悪化や組立工数増大の原因になっている。

そこで、TRIZの対立マトリックスを使用してアイデアの発想を行った。図表5は、対立マトリックス適用の概要プロセスである。改善すべき技術特性として“No.13:物体の安定性”、悪化する技術特性として“No28:測定の精度”を選択し、発明原理の“No.13 :逆発想”を得た。これらを検討した結果“導体と磁石の構造を逆転する”というアイデアが生まれた。

図表5



(2)品質工学によるコンセプトの確立
■ 制御因子と信号因子の選定

TRIZにより発想したアイデアを実現するには、回転数とトルクに影響する設計上の要因を明確にする必要がある。そこで、選定した制御因子の代表例が図表6である。

図表6


負荷発生装置のアウトプットであるトルクは、インプットであるペダルの回転数(信号因子)により変化するので、5水準の信号因子を設定した。

以上の検討により、TRIZのコンセプトの具現化は、図表7に示す技術開発の確立に置きかえられた。

図表7


■ 直交表への割付と実験結果

直交表の内側には制御因子、外側には信号因子Mを割付け、一つの信号因子に対して2回実験を実施した。図表8は、直交表の割付と一部実験データを表している。

図表8


図表9は、主要な要因の分散分析表の一部である。寄与率を比較すると、“A:Cuの厚さmm”が94.6%であり、重要パラメータである。

図表9


■ 改善案の作成

分散分析表によりばらつきに影響が大きい要因は、“A:Cuの厚さmm”である。この“A:Cuの厚さmm”の水準別傾向は、3水準よりも2水準、2水準よりも1水準のがSN比ηが大きく、薄いほどよい傾向にある。これをさらに検討して、銅板を銅メッキに変更する案を採用した。

図表10は、負荷発生装置の改善後のイメージ図である。改善後の構造では、導体(銅板)の技術歩留、組立調整工数、メンテナンス時の分解性などの問題が全て解決できる。コスト的にも、導体(銅板)から銅メッキ、電磁石の小型化により、製品コストの半減に成功した。

図表10





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